読んでみて欲しい!女性の心の奥をキュッと締め付けるような小説3つ
毎日寒い日が続くこの季節、お休みの日はいっそのことどこにも出かけないでゆっくりとお内にこもって読書をしてみませんか?
通勤時間や仕事の休憩時間に読む読書とは違い、時間の制限のない読書はいつもの読書では味わえない新たな感情が湧きだすこともあります。
今回は、そんな冬のおこもりタイムに読んでほしい、オンナゴコロをキュッと締め付けるような小説をご紹介したいと思います。
白蝶花/宮木あや子(新潮文庫)
現在映画公開中の「花宵道中」の作者、宮木あや子さんの小説です。
女性が恋や仕事など生き方を選択する自由がなかった時代、財政的に厳しくなった実家のために財閥の主人・三島章太郎の妾となった泉美を中心に、戦前から戦後までの苦しい時代を生き抜いた女たちのお話を描いた短編集。
三島章太郎の娘・和江との複雑な関係、大きなお屋敷の中でおこるいくつもの恋や憎しみ、嫉妬、そして女が自分の人生を自分で選択することの難しさや、戦前戦後の時代を生き抜く人々の強さが、まるで当時を生き抜いた人が書いているかのように鮮明かつ具体的で、登場人物の心理描写がリアルな小説です。
短編集とはいえ、すべて登場人物同士が小説の中で複雑につながり、一気に読みすすめられてしまいます。
宮木あや子の小説は、こういった登場人物や前後の話がどこかしらで必ず、しかも密接にリンクしているのが非常に面白く特徴的です。
私たちが経験したことのない、女性にとってはつらく苦しい時代であるにもかかわらず、読み進めていくうちに登場人物たちの気持ちが心の奥底にずっしりと刻みこまれ、現代の私たちが抱える悩みや問題とぴたりとつながる不思議な感覚があります。
読み終わった後には、あの厳しい時代の女性たちの生き方に、深く思いをはせてしまうことでしょう。
セシルのもくろみ/唯川恵(光文社文庫)
優しい夫と可愛い息子、家庭に何の不満も不自由もない専業主婦・奈央は、平凡ながらもこのままいつまでも幸せな人生を送ると考えていたけれど、友だちに誘われた女性誌ヴァニティの読者モデルに軽い気持ちで応募し、まさかの合格と言う結果が。
一緒に受けた友達は落選し、平凡な主婦である奈央だけが受かったことに嫉妬し、嫌味を込めた言葉を浴びせる。いざ読者モデルとはじめてみると、そこは女の嫉妬やねたみなど女の欲が渦巻いている世界。
自分とは違う世界の人間だと思っていたモデルの彼女たちの中で仕事を始めて、やがて自分の中にも、彼女たちと同じ「女の欲」が存在することを気付いていく、と言うお話です。
唯川恵の小説は、いつも女性が必死に隠している心の裏側をリアルに表現しています。
世の中の女はみんなそれぞれ性格も考え方も趣味も違うのに、同じ女として必ず共感できる気持ちが描かれているところに、多くの女性読者の支持を集めているように思います。
女は誰しも、負けたくない、自分の方が勝りたいという欲求を持っているもの。
それが勉強なのか、おしゃれなのか、恋愛なのかはわかりませんが、自分ではその気がなくてもいざそのような直面に多々されたときに自分の中で驚くような一面が垣間見れることがあります。
そう考えると、テレビで女を武器に男性にこびを売っているタレントも、純情ぶりながらしっかり好条件の男を捕まえている同僚も、PTAやママ友の集まりに人生をかけているような母親たちの行動さえも理解できるような気がします。
自分にもある「女」の部分について深く考えさせられる、感慨深い作品です。
娼年/石田衣良(集英社文庫)
毎日何となく進んでいく平凡日常に何の興味もわかず淡々と過ごしていた大学生の少年・リョウは、ある日会員制ボーイズクラブの女性オーナー・御堂静に誘われ、出張ホストの仕事を始めます。
最初はただ「仕事」を行えばいいと思っていたリョウは、仕事を通じて女性の繊細な心情や計り知れない深い欲望、そして初めて「恋」を経験します。
この小説の中には女性の誰しもの中に潜んでいる性欲が描かれています。
そして恋がセックスとは切っても切れない関係のものであるということ、恋や愛を継続させるための手段がセックスであることなど、恋愛の中にどれだけの大部分をセックスが占めているかということが、登場人物の気持ちのなかに描かれています。
直接的な性描写も多く、人によっては読むのを少しためらってしまうような場面も出てきますが、それらのことが今この瞬間もどこかで、身近な人の間でも行われていると思うと、すごく罪深い気持ちになったり、中学生の頃に性教育を受けた時のリアルな気持ちを思い出したりと、なかなか新鮮な気持ちを感じられるのではないでしょうか。
いかがでしたか?
今回は、女性の心の奥をざわざわっとさせるような小説をチョイスしました。
たまに物思いにふけりたいとき、毎日の平凡な生活に嫌気がさした時など、他人の心の底を覗いてみるような気分で、是非これらの小説を読んでみてくださいね。
Writer / コマツマヨ
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