“配偶者控除”を撤廃できない真の理由とは?

時事ネタ

すでに結婚している方は、“配偶者控除”をご存じだと思います。
配偶者控除は、一時期「撤廃されるのではないか?」という噂もありましたが、現在も制度は残っています。
また、その背景には、“日本が配偶者控除を撤廃できない理由”があるとされています。
今回はその点を中心に、詳しく解説したいと思います。

“配偶者控除”の概要

配偶者控除とは、簡単に言うと、妻または夫がいる方、つまり結婚している方の税負担を軽くしてくれる制度のことを言います。
ちなみに、配偶者とは、夫から見た妻、妻から見た夫のことを指しています。
年収によって異なりますが、配偶者控除を利用すれば、税負担は20,000~70,000円程度軽減されます。
例えば、40歳以の夫婦で、子なし、社会保険加入済の方が配偶者控除を利用する場合、年収が250~400万円であれば、所得税の負担は19,000円軽減され、年収500~600万円であれば、所得税の負担は38,000円軽減されます。
また、上記の場合、住民税はどちらのケースでも33,000円軽減されることになります。

配偶者の所得38万円以下が利用条件

配偶者控除を利用するには、配偶者の年間合計所得額38万円以下という条件をクリアしなければいけません。
例えば、妻の給与収入が年間103万円である場合、給与所得控除によって65万円が差し引かれるため、年間合計所得額はピッタリ38万円になります。
ただ、給与所得控除は、2020年1月から一律10万円引き下げられますし、配偶者控除を利用するための条件である“配偶者の年間合計所得額38万円以下”に関しても、2020年1月から48万円以下に改正されることになっています。
ちなみに、配偶者控除の金額は、以下の通りです。

控除を受ける方の合計所得金額 控除金額
控除対象の配偶者 老人控除対象の配偶者(70歳以上の方)
900万円以下 380,000円(住民税は330,000円) 480,000円(住民税は380,000円)
900万円以上950万円以下 260,000円(住民税は220,000円) 320,000円(住民税は260,000円)
950万円以上1,000万円以下 130,000円(住民税は110,000円) 160,000円(住民税は130,000円)

配偶者控除が撤廃されるという噂は本当だったのか?

2018年、「配偶者控除が撤廃されるのではないか?」という噂が流れました。
ただ、実際は条件が変更になっただけで、撤廃されるには至っていません。
具体的には、所得が1,000万円を超える方は利用できなくなったり、納税者の所得額によって配偶者控除の金額が変わったりという変更が実施されています。
つまり、配偶者控除の撤廃は、結婚をしているすべての方ではなく、一部の高所得者の方のみが対象になっているということです。

日本が配偶者控除を撤廃できない真の理由とは?

何度も言うように、配偶者控除には撤廃の噂があったものの、現在も制度自体は残り続けています。
では、その背景にあるとされる、“日本が配偶者控除を撤廃できない理由”とは、一体何なのでしょうか?
それはずばり、安倍総理率いる自民党の“伝統的家族観”がいまだになくならないことでしょう。
自民党に所属する議員の中には、いまだに“家庭を支えるのは妻の役目”という伝統的な家族観を持っている方も少なくありません。
また、そのような考えは、たとえ首相が代わったからいって、簡単に消え去るものではなく、これが配偶者控除に踏み切れないということに繋がっているのです。
このまま配偶者控除が撤廃されないままだと、女性の社会進出はなかなか進まないことが予想されます。
なぜなら、配偶者控除が制度として残り続けることで、結婚している女性が働く上での壁になってしまうためです。
“○○円以上稼ぐと損になる”と言われたら、なかなかそれ以上稼ごうとは思いませんよね。
自民党は、女性が社会進出しやすい環境を作ることをテーマの1つとして活動していますが、そのためにはまず、配偶者控除を撤廃すべきだと言えます。
ただ、前述のような伝統的家族観が、配偶者控除の撤廃を阻害し、矛盾した結果を生み出してしまっているのが現状です。
もっと言えば、日本が第二次安倍政権になってからは、以前より日本が配偶者控除の撤廃から遠のく形になっています。

配偶者控除の撤廃には他にもメリットがある

もし配偶者控除が撤廃されることになれば、女性にとってとても働きやすい環境になり、女性の社会進出はこれまでよりもっと進むことが予想されます。
また、配偶者控除が撤廃されることによって、“高所得者だけが得をする”という状況を改善できるというメリットも生まれます。
日本の所得税は、“累進課税”と言って、稼げば稼ぐほど多く課税されるという仕組みになっています。
ただ、配偶者控除においては、“配偶者にそれほど収入がなくても生活が成り立つ層”、つまり高所得者のだけが得をするという、いわば累進課税とは逆の現象が起こってしまうのです。
夫婦ともに収入が少ない家庭では、どうしても配偶者双方が控除の枠を超えて働かなければいけません。
つまり、このまま配偶者控除という制度が残り続けてしまうと、そのような共働き世帯は優遇を受けられず、高所得世帯ばかりが得をし続けるということです。
2018年に実施された配偶者控除の条件変更では、所得が1,000万円を超える方が対象外になりましたが、それでもまだまだ、高所得者だけが得をしているという状況に代わりはありません。

配偶者控除の今後について

配偶者控除撤廃の話とは別に、まことしやかに導入が囁かれているのが、“夫婦控除”という制度です。
これは、簡単に言うと、たとえ共働き世帯であっても、配偶者控除と同じように、ある程度の税負担の軽減が受けられる制度のことを指しています。
もし、今後夫婦控除が導入されることになれば、共働き世帯の負担軽減だけでなく、女性の社会進出の拡大というメリットも生まれます。
ただ、この夫婦控除という制度は、まだ“話し合い”の段階であり、どのようなルールで導入されるのか、いつ導入されるのかなどについては、ハッキリ決まっていません。
また、夫婦制度のルールが固まったとしても、すぐに導入される可能性は低いと言えるでしょう。
その理由として、以下のことが挙げられます。

 税制面、社会保障制度面などを考慮すると、すぐに導入することが難しい
 日本は個人単位での課税を採用しているため、世帯単位での取得を把握するのが難しい
 全夫婦世帯に考慮するため、制度新設のための莫大な財源を確保しなければならない

夫婦控除が導入されることで生まれるデメリットもある

配偶者控除に代わる制度である夫婦控除が導入された場合、共働き世帯は恩恵を受けられるものの、専業主婦世帯は損をすることになります。
また、互いの収入を明かさずに生活している共働き世帯は、夫婦控除を利用するために、お互いの収入を明かさなければいけません。
もっと言えば、配偶者控除が撤廃され、夫婦控除が導入された後、女性の社会進出は拡大するかもしれませんが、その分夫はこれまで以上に、家事や子育てに協力しなければいけなくなります。
さらに、保育士や保育所不足による待機児童問題がなかなか解消されないことを考えると、夫婦控除が導入されたところで、必ず女性の社会進出が拡大するとは限りません。

まとめ

ここまで、日本が配偶者控除を撤廃できない真の理由を中心に解説しました。
日本において、今後配偶者控除が撤廃される可能性は、今のところ低いと言えます。
撤廃されるとしても、それは何年も先の話になるでしょう。
また、配偶者控除に代わる制度として、話し合いの最中だとされる夫婦控除に関しても、山積する問題を解決しなければ、導入には踏み切れないのが現状です。

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