WHOのパンデミック表明が遅れた理由

時事ネタ

世界を震撼させている“新型コロナウイルス”の感染拡大。
現在はヨーロッパなどでも多数の感染者や死亡者が確認されていて、先日WHO(世界保健機関)から“パンデミック”の表明がされたことも話題になっています。
では、なぜWHOのパンデミック表明は、こんなにも遅れてしまったのでしょうか?

パンデミックって何?

パンデミック表明が遅れた理由の前に、まずはパンデミックとはどういうものなのかについて解説しましょう。
パンデミックとは、特定の感染症における“世界的な大流行”を指しています。
その語源はギリシャ語の“パンデミア”であり、パンは“すべて”、デミアは“人々”を意味しています。
感染症の流行は、その規模に応じて大きく3つに分類されていて、中でももっとも規模が大きいものがパンデミックです。
具体的には、規模の小さいものから“エンデミック”、“エピデミック”、“パンデミック”に分けられます。
それぞれの詳細は以下の通りです。

①エンデミック
特定の人々、あるいは地域において、ポツポツと流行が見られる状態です。
地域的に狭い範囲に限定され、患者数も少なく、拡大速度もまだ遅い段階のため、それほど危険な状態ではありません。
“地域流行”とも表現されますね。

②エピデミック
特定のコミュニティ内で、特定の一時期に感染症が広がることを指します。
特に、突発的に規模が拡大し、集団で発生することは“アウトブレイク”と呼ばれ、ここまで来ると“流行”と判断されます。

③パンデミック
感染症の流行規模がさらに大きくなり、国中や世界中で感染症が流行している状態です。
まさに“世界的な大流行”ですね。
また、WHOは、1つ1つの感染症のパンデミックの状況を以下の3つの段階に区別して分類しています。

 前パンデミック期
 パンデミック・アラート期
 パンデミック期

ちなみに、WHOがパンデミックを表明して特定のウイルスを警戒するのは、2009年に“新型インフルエンザ”が流行したとき以来となります。
そう考えると、新型コロナウイルスの感染拡大がどれほど甚大で、どれほど危険なものなのかがわかりますね。

WHOのパンデミック表明はなぜ遅れたのか?

WHOのパンデミック表明は、至るところで「遅すぎる」と批判されています。
新型コロナウイルスに感染していると確認された人々の人数は、パンデミック表明時点で12万人に迫る勢いでした。
また、その少し前から、イタリアを始めとするヨーロッパ諸国で爆発的に感染者が増加し始めていて、すでに“世界的な大流行”であることは世界中の人々が認識していました。
このようなことを鑑みると、確かにWHOのパンデミック表明は遅いと言えますね。
では、WHOのパンデミック表明が遅れた理由には、一体どんなことが挙げられるのでしょうか?

中国政府への配慮があったから

パンデミック表明が遅れた1番の理由として挙げられるのは、WHOにおける中国政府への配慮だと言われています。
中国政府は、今回の新型コロナウイルス感染拡大に伴い、WHOに対して2,000万ドル(約21億円)という巨額の寄付を行いました。
また、中国政府は寄付について、「保険医療体制が整っていない国々への支援が必要だというWHOの呼びかけに応えるもの」と説明していますが、実はこれが“パンデミック表明を遅らすための賄賂”だったのではないかという噂が立っています。
つまり、多額の寄付金を拠出してもらった中国政府に配慮しすぎたせいで、WHOのパンデミック表明が遅れてしまったということですね。

非難されることを恐れたから

WHOのパンデミック表明が遅れた理由には、表明することで非難されるのを恐れたからということも挙げられます。
先ほども少し触れたように、WHOは2009年、新型インフルエンザに対するパンデミック宣言をしています。
また、パンデミック宣言に伴い、各国政府は新型インフルエンザのワクチン購入に多額のコストを費やしました。
ただ、実際は推測されていたほど死者が出ず、状況も悪化しなかったため、ワクチンが使われることはほとんどありませんでした。
そのため、パンデミック宣言をしたWHOは、世界各国から「恐怖を駆り立てた」として非難されてしまったのです。
したがって、WHOは今回の新型コロナウイルスにおいて、同様の事態を起こしてはいけないと判断し、なかなかパンデミックの表明ができなかったと考えられています。

混乱が起こるのを防ぎたかったから

パンデミック表明が遅れた理由には、世界中で混乱が起こるのを防ぎたかったからということも挙げられます。
先ほども触れたように、2009年に新型インフルエンザが流行した際は、思ったほど規模が拡大しませんでした。
また、実際新型インフルエンザに感染しても軽症で済む方が多かったにもかかわらず、多くの医療機関に大勢の人々が押し寄せるなどの社会的混乱も起こっています。
このようなことを考慮した結果、WHOはパンデミックの表明に慎重になり、世界中で感染が広がった現段階で初めて表明するに至ったという見方もあります。

いつまでパンデミックの状態は継続するのか?

新型コロナウイルスの感染拡大は日に日に勢いを増しており、いまだに収束の見通しがまったく立っていません。
中国の国家衛生健康委員会は、3月12日の記者会見において「感染のピークは過ぎた」と表明していますが、世界情勢を見るととてもピークが過ぎているとは思えませんね。
では、このパンデミックの状態は一体いつまで継続するのでしょうか?
2009年の新型インフルエンザの際は、パンデミック宣言から解除まで1年2ヶ月を要しています。
新型コロナウイルスに関しても同じ期間がかかるとするなら、解除されるのは2021年の5月となります。
つまり、今年いっぱいはパンデミックの状態が続く可能性は高く、現時点では東京オリンピック等の年内開催も現実的ではないと言えますね。

イタリアで新型コロナウイルスが爆発的に流行している理由

新型コロナウイルスがパンデミックの状態にあることを象徴しているのが、ここ最近爆発的に感染者・死亡者を増加させているイタリアです。
現時点での感染者数は30,000人以上であり、特筆すべきはなんといってもその致死率の高さです。
イタリアの致死率は3月11日時点で6.6%にも上り、これは感染拡大の原因とされる中国・武漢よりも高い数字となっています。
また、イタリアで新型コロナウイルスが爆発的に流行している理由は、主に2つあります。
1つは、高齢者が多いことです。
イタリアは平均寿命が男女ともに80歳を超える長寿国で、全人口のうち23%は65歳以上の方が占めています。
新型コロナウイルスは、高齢かつ特定の持病を持つ方ほど致死率が上がるとされているため、これはイタリアの特徴と大きく関係していると言えるでしょう。
そして、イタリアにおける新型コロナウイルスの爆発的流行には、医療現場の混乱も大きく関係しています。
現地メディアや個人の情報発生を総合すると、北イタリアで感染者が急増している地域の病院では、医療に従事する者や医療器具が不足し、重傷者の治療に手が回らないという事態が発生しているようです。
つまり、“医療崩壊”が起こっているということですね。

まとめ

WHOのパンデミック表明は確かに遅く、早めに表明することで、各国がもう少し迅速に対応できたのではないかという声も多く挙がっています。
また、今回表明が遅れたことで、WHOは世界中から信用を失ったという指摘もされており、このタイミングでの表明は失敗だったといっても過言ではないでしょう。
今後も、パンデミック表明がどれだけ各国の新型コロナウイルス対策に影響するのか目が離せません。

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