“飲食事業者の業態転換支援”について解説します

時事ネタ

2020年5月25日、当初の予定を少し早め、ついに緊急事態宣言が全国で解除されました。
ただ、特に大きなダメージを受けた飲食業などの業界は、すぐにコロナ禍から抜け出せるわけではありません。
今回は、そんな飲食事業者の方に向けて、”飲食事業者の業態転換支援“という制度について解説します。

飲食事業者の業界転換支援の概要

当制度は、新型コロナウイルスの感染拡大により、以前と比べて大きく売上をダウンさせてしまった都内の中小飲食事業者(個人事業主含む)が、新たな業務に取り組む際にかかる費用について、都が支援するというものです。
具体的には、近年飲食業界で採用される機会も増えているテイクアウト、デリバリー、移動販売を行う際にかかる費用を支援してくれます。
また、支援される金額については、上記の新しい業務にかかる販促費や車両費、器具備品費などのうち4/5以内、最大100万円までとなっています(1,000円未満切り捨て)。
緊急事態宣言は全国で解除されましたが、世間では飲食店等への来店を控えるいわゆる“自粛モード”がまだ継続すると予想されています。
したがって、多くの飲食店は、テイクアウトやデリバリーなどで売上を確保しなければいけません。
ただ、売上が落ち込んでしまっている飲食店が、新たな業務をスタートさせるというのは、決して簡単なことではないでしょう。
当制度は、そのような新たにスタートを切ろうとする飲食事業者にとって、少しでも支えになればという思いで実施されています。

申請条件について

当制度は、コロナ禍から抜け出したい飲食事業者にとって、非常にありがたい制度です。
ただ、申請するには数々の条件をクリアしなければいけません。
満たすべき条件は主に以下の通りです。

①中小企業者に該当すること(日本標準産業分類上の飲食店に該当する中小企業者および小規模事業者で、中小企業基準法で定義する中小企業者であること)
②東京都内で飲食事業を行い、なおかつ以下の条件をクリアすること
法人の場合
 登記簿謄本により、都内に本店または支店があると確認できること
 “法人事業税および法人都民税の納税証明書”を提出できること
個人事業主の場合
 都内税務署に提出した“個人事業の開業・廃業等届出書”の写しにより、都内所在等が確認できること
 “個人事業税の納税通知書”および“住民税納税証明書”が提出できること

③1期以上の決算を経ていて、税務署に確定申告済みで受付印のある直近1期分の確定申告書の写しが提出できること
④保健所の許可を取得していて、各許可書等の写しが提出できること

上記の他にも、当制度以外の公的な支援制度を利用しないこと、東京都および公社に対する資料、使用料等の債務の支払いが滞っていないことなど、満たさなければいけない条件は多くあります。
したがって、申請を考えている飲食事業者は、まず申請条件を熟読し、理解するところから始めるべきです。

申請期間・申請方法等について

当制度の申請期間は、2020年4月23日~11月25日となっています。
また、申請する期間によって交付決定の予定日が異なり、支援対象期間は交付が決定した日から2021年1月31日までで、最長3ヶ月間です。
ちなみに、2020年4月1日以降で、交付決定前に着手した費用についても、契約や支払いの確認ができれば支援の対象となります。
対象費用は以下の通りです。

①販促費(印刷物制作費、PR映像制作費、広告掲載費など)
②車両費(宅配用のバイクリース代、台車など)
③器具備品費(Wi-Fi導入費、タブレット端末導入費、梱包・包装資材購入費など)
④その他(宅配代行サービスへの登録料、月額使用料、配送手数料など)

飲食事業者自体がデリバリー等を行うわけでなく、代行サービスに依頼するときにかかる費用も支援金の対象となるのが嬉しいですね。
そして、当制度の申請方法は、郵送のみとなっています。
公社への持参やFAX、メールなどでの申請は受け付けていませんので、注意してください。
具体的な申請~支援金の受け取りまでのスケジュールは以下の通りです。

①公社Webサイトから申請書をダウンロード
②申請書の作成
③申請書の提出
④テイクアウト、デリバリー、移動販売における初期費用の発生(発注、契約、納品・登録完了、広告掲載、支払い)
⑤助成対象経費報告の提出
⑥完了検査
⑦支援金額の確定(完了検査から2~3週間程度)
⑧支援金の請求
⑨支援金の支払い(請求書到着から2~3週間後)

ちなみに、当制度が予算額に達した場合は、受付期間中であっても終了するため、その点は留意しておいてください。
また、書類に不備がある場合は、上記の2~3週間という期間が延びることもあります。

支援金対象外となる費用について

先ほど、当制度の支援金対象となる費用について解説しましたが、逆に対象外となってしまう費用には、一体どんなものが挙げられるのでしょうか?

①交通費、宿泊費、保険料(輸送に係るものを除く)、飲食費、雑費など
②セミナー、ワークショップ等の開催または参加費、招待券購入費、駐車場代など
③租税公課(消費税、印紙代なと)
④振込手数料
⑤調査、企画、提案、ディレクション、打ち合わせおよびコンサルティング的要素を含む経費
⑥その他不適切と認められる経費

ちなみに、支援金の対象となる費用であっても、以下の場合は対象外になってしまうため、注意しましょう。

①見積書、契約書、納品書、請求書、振込控、領収書等の帳簿類が不備の場合
②写真等で資材・販促物の使用が確認できない場合や、明細書と写真が一致しない場合
③親会社や子会社、グループ会社等との取引に要する経費
④再委託が行われている場合
⑤委託した業務を委託先が生業としていない場合
⑥対外的に自社の通常業務と謳っているものを外部委託している場合
⑦一般価格や市場価格等と比べて著しく高額な場合
⑧委託先や契約、実施、支払いが不適切な場合
⑨契約から支払い、決済までの手続きが、支援金対象期間中に行われていない場合

注意点について

当制度を利用した飲食事業者は、支援を受けた事業の完了した日の属する公社の会計年度終了後5年間、支援を受けた事業に関するすべての関係書類を保存しなければいけません。
また、支援を受けた事業の実施状況、支援金の収支、関係書類その他について、公社職員による立ち入り検査が行われ、報告を求められることもあります。
ちなみに、支援を受ける飲食事業者、外注先事業者、その他関係者が以下のいずれかに該当している場合、支援金の交付決定は一部取り消され、すでに交付されている分に関しては、期限を定めて返還しなければいけません。
悪質な場合は刑事罰が科せられることもあるため、注意しましょう。

①交付決定時または承認変更時の内容と異なる事実が見つかったとき
②不正に支援金を受け取ろうとしたとき
③支援金を他の事業に使用したとき
④東京都内で事業を行っていないことがわかったとき
⑤東京都暴力団排除条例に規定する暴力団関係者であるとわかったとき
⑥申請要件に当てはまらない事実が見つかったとき
⑦支援金交付決定の内容あるいはこれに付した条件等に違反したとき
⑧その他、公社が不適切と判断したとき

まとめ

ここまで、飲食事業者の正念場を支えてくれる“飲食事業者の業態転換支援”について解説しましたが、いかがでしたか?
利用するための条件は多いですが、これまで都内でまっとうに飲食業を営んできた企業や店舗であれば、利用できる可能性は高いです。
まだまだ、飲食事業者にとって辛い時期は続きますが、なんとかこの苦境を乗り切り、コロナ禍から脱出しましょう。

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