“新型コロナウイルス感染症対応緊急借換”について

時事ネタ

新型コロナウイルスの影響を受けた企業の中には、資金繰りの一環として、融資の借り換えを考えているところもあるでしょう。
また、そのような企業が、保証協会の保証付き融資をすでに利用しているのであれば、ぜひ“新型コロナウイルス感染症対応緊急借換”という制度を利用すべきです。
今回はこの制度について解説します。

新型コロナウイルス感染症対応緊急借換の概要

当制度は、現時点で保証協会の保証付き融資を利用していて、なおかつコロナの影響で事業活動に不利益が生じている都内の中小企業者等に対し、保証付き融資の借り換えを支援するというものです。
具体的には、すでに受けている保証付き融資を含め、最大2億8,000万円まで融資を受けることが可能になります。
また、利用するのが中小企業者ではなく組合の場合、さらに2億円多い4億8,000万円まで融資を受けられます。
既往保証付き融資の借り換えを行うことで、資金繰りの安定や経営状況の改善を図るための融資メニューである当制度は、多くの中小企業等にとって大いに利用する価値がある制度だと言えるでしょう。

融資対象者について

当制度を利用できるのは、中小企業者あるいは組合のみです。
また、以下のすべての条件を満たすことで、初めて融資対象となります。

①東京都内に事業所等を持ち、なおかつ信用保証協会の保証対象業種に属する事業を行っていること
②上記事業を行うために許可等がいる業種の場合は、その許可等を受けていること、あるいはこれから受けること
③事業税等の申告漏れ、滞納、社会保険料の滞納がないこと(完納の見通しが立っている場合等は除く)
④現在も今後も、暴力団員等に該当せず、暴力団員等に経営を支配されず、かつ暴力的な要求等をしないこと
⑤新型コロナウイルスの影響で、事業活動に不利益が生じていること
⑥直近3ヶ月(申込月の前々月含む)の売上実績、または今後3ヶ月(申込月の翌月含む)の売上見込みが、令和元年12月以前の直近の同じ時期と比べて5%以上下がっていること
⑦保証協会の保証付き融資を利用していること
⑧事業計画の策定により、資金繰りの安定化や経営状況の改善に着手すること

融資対象となるための条件が少し多い制度であるため、利用を検討する中小企業者等は、まずこの条件を正確に把握するところから始めましょう。
1つでも欠けていると、計画は一気に狂ってしまいます。

融資の詳細について

当制度の資金使途は、運転資金のみとなっています。
また、先ほども触れたように融資限度額は2億8,000万円(組合は4億8,000万円)で、既往保証付き融資に、当融資にかかる諸費用を加えた額の範囲内となります。
融資期間は据置期間2年以内を含む10年以内で、融資利率は以下の通りです。

 融資期間3年以内:1.7%以内
 融資期間3~5年以内:1.8%以内
 融資期間5~7年以内:2.0%以内
 融資期間7~10年以内:2.2%以内

ちなみに、責任共有制度の対象外になる場合は、上記期間の融資利率がそれぞれ2%下がります。
返済方法としては、分割返済が採用されていますが、融資期間が1年に満たない場合は、一括で返すこともできます。
また、信用保証料は東京都がすべて負担し、当制度の保証を含めた保証の合計残高が8,000万円を下回る場合、原則無担保となります。

申込先、必要書類について

当制度の申込は、令和2年3月17日に開始しています。
また、申込先は東京都中小企業制度融資取扱指定金融機関のみです。
ちなみに、申込には以下の書類が必要なため、利用したい中小企業者等は必ず確認しておきましょう。

①信用保証委託申込書、あるいは信用保証委託契約書(各1部)
東京信用保証協会および斡旋機関から申し込む場合は、融資あっせん用を使用してください。

②個人情報の取り扱いに関する同意書(2部)
③印鑑証明書(申込人および連帯保証人のもの)(各1部)
④商業登記簿謄本(法人の場合)(1部)
⑤直近2期分の確定申告書の写し(2部)
⑥納税証明書(1部)
⑦“新型コロナウイルス感染症対応”該当届(1部)
⑧融資対象であると確認できる書類の写し(1部)
⑨“新型コロナウイルス感染症借換”事業計画書(1部)

“新型コロナウイルス感染症借換”事業計画書とは、資金繰りや経営状況の改善着手するために、当制度を利用する中小企業者等が作成を義務付けられている書類をいいます。
具体的には、当制度によって借り換える既往の保証付き融資の状況と、今後計画的に取り組む事項(売上・受注の増加、収益性の向上、その他)、経営の実績および見込みについて記入します。
ちなみに、すでに作成済みの事業計画書を添付する場合は、今後計画的に取り組む事項、経営の実績および見込みの記入を省略することができます。

保証協会の保証付き融資制度とは?

当制度は、保証協会の保証付き融資制度をすでに利用している中小企業者等が対象の制度です。
保証付き融資とは、万が一借主の返済が滞った場合に、借主に代わって保証協会が金融機関に立て替え払いを行ってくれるというものです。
ただ、保証を利用する対価として、中小企業者等は所定の信用保証料を支払わなければいけません。
また、利用する中小企業者等は、“企業規模”、“業種”、“区域・業歴”という3つの基準を満たす必要があります。
それぞれ具体的に見てみましょう。

①企業規模
業種別に資本金と従業員数の条件が定められていて、いずれかの条件に合致しなければいけません。
例えば、小売業・飲食業であれば、資本金5,000万以下または従業員50人以下のいずれかを満たさなければいけません。

②業種
ほとんどの業種は保証対象ですが、農林漁業、金融業など、一部の業種は保証対象外になります。

③区域・業歴
保証付き融資を利用する企業は、原則として、各保証協会の管轄区域で事業を営んでいる必要があります。
また、保証制度によっては、要件として業歴が定められていることもあります。

東京都中小企業融資制度取扱指定金融機関とは?

当制度の申込先は、東京都が実施する他の緊急融資制度とは異なり、東京都中小企業融資制度取扱指定金融機関のみとなっています。
これは、文字通り東京都の中小企業制度融資を取り扱っている金融機関をいい、以下の83の金融機関が指定されています。

普通銀行 足利、阿波、伊予、SBI、北日本、きらぼし、きらやか、群馬、京葉、埼玉りそな、静岡、静岡中央、常陽、大光、第四、千葉、千葉興業、筑波、東京スター、東邦、東和、徳島、栃木、八十二、東日本、百十四、北越、北陸、みずほ、三井住友、三井住友信託、三菱UFJ、武蔵野、山口、山梨中央、横浜、りそな
信用金庫 青木、朝日、足利成和、青梅、亀有、川崎、興産、小松川、西京、さわやか、芝、湘南、城南、城北、昭和、巣鴨、西武、世田谷、瀧野川、多摩、東栄、東京、東京三協、東京シティ、東京東、東京ベイ、飯能、目黒、横浜
信用組合 あすか、東、共立、江東、七島、青和、全東栄、第一勧業、大東京、東京厚生、東浴、中ノ郷、ハナ、文化産業
政府系金融機関 商工組合中央金庫
漁協・農協系統金融機関 東京都信用漁業協同組合連合会、東京都信用農業協同組合連合会

まとめ

ここまで、東京都で実施されている“新型コロナウイルス感染症対応緊急借換”について解説してきましたが、いかがでしたか?
当制度の存在を知らなかったという都内中小企業者等は、1度利用条件や融資内容などを詳しくチェックしてみましょう。
当制度を利用することが、コロナの影響を受けた企業の将来を左右する重要な選択になる可能性もあります。

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