コストプッシュ型インフレとは?

時事ネタ

現在、日本はインフレ傾向にあります。
しかし、このインフレは望ましいものではなく、コストプッシュ型インフレと言われるものです。
コストプッシュ型インフレというのは、いったい何なのでしょうか?
その意味と、他のインフレとの違いや問題点について解説します。

コストプッシュ型インフレとは?

近年、日本では物価が上昇傾向にあります。
消費や投資が不足してしまうデフレからの脱却を目指す日本にとってインフレは望ましいはずなのですが、現在のインフレはあまり喜ばれるものではありません。

なぜかというと、現在日本で起こっているインフレはコストプッシュ型インフレと言われるもので、本来望まれている形とは異なるのです。
本来のインフレとは、どう違うのでしょうか?

本来、インフレが起こる際は賃金の上昇が起こります。
そして、金銭的な余裕が生じることで需要が増え、需要が供給を上回ることで物価が上昇していくというのが、正しいインフレです。

それに対して、現在起こっているコストプッシュ型インフレというのは、エネルギー資源や食料品など必要なものの輸入価格が高騰してしまったため、物価の上昇が先行してしまっている状態をいいます。

賃金が増えているわけでもないのに、消費する金銭だけが強制的に増やされている状態です。
この状態が続いても、景気は良くなるわけがありません。

所得創出のプロセスでは、生産者が生産したものに付加価値を付け、それを顧客に需要という形で購入してもらい、それに対して支出してもらいます。
顧客となる家計や企業、外国は販売者に代金を支払い、生産者には販売者から支払われています。

このプロセスにおいて、生産と支出、所得は必ず一致します。
国内における生産の合計が、国内総生産と言われるものです。
3つが一致するので、GDPは清算だけではなく支出や所得の合計とも言えます。

この3つが一致するということは、付加価値の価格が上昇して生産金額が上昇すると、それに伴って所得も増えていきます。
物価が上昇した場合は、生産も支出も所得も、それぞれ同じだけ増えていくことになります。

しかし、生産者が外国だった場合はどうなるのでしょうか?
その場合、輸入物価の引き上げが起こってしまいます。
そうなると、名目的に3つの要素は増えるのですが、その結果上昇するのは外国の生産者の所得となってしまいます。

コストプッシュ型インフレが起こってエネルギー価格や食料価格が上昇したとしても、日本国民の所得は一切増えません。
そして、所得が増えていないのに支出が増えてしまうのです。

これは、消費税の増税にもよく似ています。
消費税の増税分も物価の上昇分と考えれば、所得が増えないまま物価が上昇しているという点で同じことなのです。

そうなると、国民の可処分所得は減少してしまいます。
その結果、デフレ化が起こる要因となるのです。
実質所得の減少にもなるので、企業収益の悪化にもなり国内需要の下押し要因となってしまうのが、今回怒っているインフレなのです。

日本の必需品は輸入が多い

日本の問題となっているのは、輸入品の種類についてです。
日本はそれほど輸入に依存しているわけではなく、GDPと材の輸入との関係を見ると日本は13.6%とブラジル、アメリカに次いで低い数値となっています。

しかし、日本で輸入してるものはエネルギーや食糧など、必需品に分類されているものが中心です。
今回、コロナ禍が起こったことに加えてロシアのウクライナ侵攻もあり、世界中でエネルギー資源や食料の価格が高騰することとなりました。

その結果、日本では輸入物価が大きく上昇しているのです。
それに加えて、日本ではコロナ禍の対策として十分な財政出動をしていませんでした。
そのせいで、デフレも続いて日本銀行も利上げができる状況ではありませんでした。

アメリカの場合は、大規模な財政出動をしています。
その効果があって、景気が一気に拡大しているのです。
FRBでは、今後断続的に利上げしていく、と宣言しています。

その結果が、現在の円安に表れているのです。
金利が低い日本円よりも金利が高いアメリカのドルのほうがより多く買われているため、円安が起こっています。

現在、日本ではコストプッシュ型インフレが進行しています。
その状態で放置していると、エネルギーや食糧などの価格が引き上げられていき、低所得者には特に大きなダメージとなってしまうでしょう。

現在、日本のカロリーベース穀物自給率は、37%しかありません。
野菜は79%ではあるものの、その種のほとんどは外国産です。
外国から種が輸入されないと、野菜の生産も減少してしまうのです。

畜産物は50%前後ですが、日本の畜産のエサはアメリカを中心とする外国の配合肥料が中心です。
穀物価格が今後高騰していくと、配合肥料も高額になっていくでしょう。

今後、日本では自分たちの食糧がどうなるのか、国民一人一人が考えていく必要があるでしょう。
それを怠ると、日本は今後飢える国へと変貌していくかもしれません。

まとめ

景気が良くなるタイミングでは、物価が上昇するインフレが起こるものです。
しかし、いま日本で起こっているインフレはコストプッシュ型インフレというものであり、景気が良くなるのではなくむしろ悪化するインフレと言えます。
物価上昇分が外国へと流出していくため、国民の所得はむしろ悪化してしまうからです。
これが続くと、食糧不足などが起こる可能性もあるため、今のうちに話し合っておくべきでしょう。

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