毎月の電気料金の内訳をみると、「再エネ賦課金」という項目があります。
これは意外と電気料金に占める割合が高いのですが、実際は何のための料金なのかを知らずに支払っている人もいます。
再エネ賦課金とは、いったい何なのでしょうか?
その仕組みなどについて、解説します。
再エネ賦課金とは?
近年、電気代が高くなったと感じている人は多いでしょう。
生活スタイルの変化や家電が増えたこと、またオール電化住宅の増加などで電気代は平均的に上昇していますが、それを除いても高くなっていることは多いのです。
その理由の1つが、再エネ賦課金です。
これは、再生エネルギー発電促進賦課金というもので、その名前の通り再生エネルギー発電を促進するために利用者に課している負担金です。
元々は太陽光発電しかほとんどなかったので太陽光発電促進賦課金という名前だったのですが、2021年に固定価格買取制度について法改正があったため、名称が変更されています。
これは、太陽光発電を始めとした再生エネルギーを基とした電気の買取に使用することを目的としています。
従来の原子力発電や火力発電などと比較して再生エネルギー発電は単価が高くなってしまうので、それを利用者が分担して負担するように徴収しています。
そして、実はこの金額が年々上がっているのです。
2012年に固定価格買取制度がスタートした頃は、再エネ賦課金が1kWhあたり0.22円でした。
一般的な家庭の消費量であれば月額数十円なので、あまり気にならない額だったでしょう。
しかし、2021年には1kWhあたり3.36円と、およそ15倍になっています。
そのため、月額では1000円近くなることもあります。
年間にすると、1万円前後負担することになるのです。
なぜこれほど増えているのかというと、この10年間で太陽光発電設備の設置数が急激に増えているのが原因の1つです。
住宅の中にも設置しているところが増え、工場やビルの屋根などに設置する企業や山中の広い土地を切り開いてメガソーラーを設置する企業も増えました。
太陽光発電を設置する目的は、自家消費もありますが売電目的もあります。
特に、メガソーラーなどは完全に売電のために設置しています。
その結果、再生エネルギー発電の電気の買取量が増え、負担も大きくなったのです。
電力中央研究所では、今後も再エネ賦課金の額は増えていくと予想しています。
買取価格は2500億円だったのが政府試算では4兆円近くになり、中央研究所の試算では5兆円近くになるとされています。
そうなった場合、一般家庭の負担は月額で1,500円近く、年間にすると15,000円以上負担することになるでしょう。
こうなったのは、いったい何が原因なのでしょうか?
再エネ発電の電気買取状況
そもそも、再エネ賦課金は売電の買取費用から発電によって不要となった火力発電の燃料費などのコストを差し引いた金額となっています。
つまり、再エネ賦課金が上がってしまっている理由は、再エネ発電の電力買取単価を高く設定しすぎている、ということなのです。
そもそも、再生エネルギー発電の電力の買取金額は、2009年にスタートしたFITという制度によって定められました。
FITというのは固定価格買取制度のことで、買取を開始してから一定期間は固定金額で買い取るという制度です。
発電量が10kW未満の家庭用太陽光発電の場合は設置してから10年間、それよりも容量が大きい産業用設備の場合は、設置から20年間固定価格での買取となっています。
FITの開始当初から買取をしている場合は、2019年から変動価格での買取になっているでしょう。
太陽光発電などの発電された電力は、一見すると国が買い取っているように見えるのですが、実際は違うのです。
買い取るように見せかけて、その負担は国民に押し付けているのです。
火力発電などで発生する温室ガスについては、以前から削減が求められていました。
その代わりに数を増やしていた原子力発電も、福島の原発事故があったことでほとんどが稼働を停止し、廃止措置を取られたところもあります。
そこで、太陽光発電を始めとした再生エネルギー発電に注目が集まりました。
それを普及させるために、高額で買い取るFITという制度を導入しているのです。
そして、必要な費用は消費者に負担させることで、普通に電力を消費しても損になるから、太陽光を設置したほうがいいと思わせようとしているのです。
また、企業による売電も歓迎しているため、メガソーラーを設置する企業はどんどん増えています。
その負担が、再エネ賦課金として一般の消費者にのしかかっているのです。
再エネ賦課金は、一度国の指定機関に納められてから、再生エネルギーの買取状況に応じて電力会社に交付され、ほとんどは発電事業者にわたります。
一般家庭の太陽光発電に支払われているのは6%だけで、後はすべて大規模な発電をしている企業へと支払われるのです。
まとめ
SDGsやカーボンゼロ宣言などによって、今後はますます再生エネルギーによる発電の需要が増えることになるでしょう。
そのため、将来的にどれほどの負担となるのかはわかりません。
もしかしたら、試算された額を大きく超える可能性もあるのです。
そうなると、一般家庭の負担は大変なことになるでしょう。
それを防ぐためにも、再エネ賦課金の在り方についてもう一度考えてみるべきではないでしょうか。