今年のはじめ、1ドル=115円台だった円相場は、一時期150円超まで円安が進み、こちらはおよそ32年ぶりの円安水準となりました。
また、日本政府はこのような止まらない円安の流れを受け、今年の9月22日に“為替介入”を実施しています。
今回は、為替介入の概要や実施することの問題点などについて解説します。
為替介入の概要
為替介入とは、通貨当局が外国為替市場において、外国為替相場に影響を与えることを目的に、外国為替の売買を行うことをいいます。
外国為替平衡操作とも呼ばれます。
日本の場合、為替介入は円相場の安定を実現するために、財務大臣の権限によって実行され、日本単独で行う場合は単独介入、欧米など、各国と合意の上一緒に行う場合は協調介入と呼ばれます。
また、実際に為替介入を実行するのは日本銀行であり、こちらは通貨間の売買であるため、その遂行には円やドルといった資金が必要になります。
日本では、財務省所管の外国為替資金特別会計の資金が為替介入に使用されます。
今回のように、急激な円安に対応する場合には、外国為替市場においてドルを売り、円を買うドル売り・円買い介入が実施され、こちらは外為特会の保有するドル資金を売却し、円を買い入れるという形になります。
ちなみに、財務大臣の代理人としての日本銀行が、海外の通貨当局に為替介入を委託するというケースもあります。
今年日本は22年ぶりの為替介入を実施
政府、日銀は9月22日、ドル売り・円買いの為替介入に踏み切りました。
こちらは、1998年6月以来24年ぶりの出来事です。
この日は、午後3時半から日銀の黒田総裁による記者会見が実施されましたが、金融緩和維持の強い姿勢が確認されたことにより、ドル円のレートは会見から約30分後の午後4時頃、1ドル=145円90銭近くまでドル高・円安が進行しました。
為替介入は、こちらを受けて午後5時頃に実施された模様で、その後は140円35銭付近までレートが推移しています。
ちなみに、こちらは日米の協調介入ではなく、日本の単独介入ですが、米財務省の広報担当者は日本の行動に理解を示していて、両国の関係性に大きな問題が生じるものではないことがわかっています。
10月には二度目の為替介入を実施
政府、日銀は、一度目の為替介入からおよそ1ヶ月後の10月21日、NY市場で二度目の為替介入を実施しています。
今回も、タイミングとしては比較的急なものであり、週末にドル円レートが1ドル152円に向かう直前でした。
ただし、これによって為替レートは、1ドル144円台半ばまで、7円以上も押し戻されました。
通貨当局は、あらかじめ介入効果が短いことを知っていて、週末に介入直後のレートがなるべく多くの人の目に触れるよう、工夫して実施している印象を受けます。
また、二度目の為替介入が一度目と違うところは、スムージングという、為替変動をなだらかにすることに徹しているという点です。
一度目は、1ドル145円後半で介入し、145円を抵抗ラインとして死守する構えを見せましたが、二度目は抵抗ラインを意識させるのではなく、円安のペースが早ければ、それを容認しない姿勢を見せています。
次回の為替介入はいつ実施される?
一度目の為替介入から、二度目の為替介入が実施されるまでの期間は、およそ1ヶ月程度空いています。
こちらの期間では、為替レートは6円ほど円安に進んでいます。
このような経験則を使うと、次に為替介入が実施されると予想できる時期は、11月中旬頃になります。
具体的には、152円から6円ほど円安になり、1ドル158円後半になったときに、三度目が実施されると目算を立てることができます。
また、計量的なトレンド分析を見ても、11月中旬頃に実施される可能性が高いとされています。
為替介入のデメリット
為替介入は、前述の通り為替相場を操作するために実施されるものですが、デメリットもあります。
こちらも為替介入の概要で触れましたが、為替介入を実施するにはドルや円などの資金が必要であり、その資金は財務省が運用する外貨準備金から捻出されます。
しかし、為替介入は長期的に実施されるわけではなく、効果は限定的であり、一時的に今回のような円安を止めることができたとしても、根本的な原因が解決されなければ、為替相場は実施前の状態に戻ることも十分考えられます。
国家予算を使っても効果が限定的なのであれば、外貨準備金を無駄に減らすより、国内への投資で経済を活性化させる方向へ予算を費やす方が、長期的に見ても効果が期待できるという見方もあります。
ただし、現時点では円安による輸入関係での不利益などを解決するために、為替介入を実施せざるを得ないという状況なのは確かです。
まとめ
ここまで、為替介入の概要や実施することの問題点などについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
為替介入の目的は、為替相場の急激な変動を抑え、その安定化を図ることにあります。
しかし、現在も円安の流れは止まっておらず、このままでは国民の生活における負担も大きくなる一方であるため、国民は個々に危機感を持ち、資産を確保できるように努めなければいけません。