私たち国民にとって、消費税はもっとも身近な税金と言っても過言ではありません。
商品を購入するたびに、私たちは消費税を支払っています。
また、消費税はこれまで、“間接税”の一種であるという認識が一般的でしたが、実際はそうではないとされています。
今回はこちらの理由について解説したいと思います。
直接税について
消費税が間接税ではない理由を理解するには、まずもう1つの税金の種類である“直接税”について理解する必要があります。
直接税とは、納税義務のある方が直接手続きを行い、税務署に納める税金のことをいいます。
この場合、税を負担する人物と納める人物はイコールということになります。
例えば、所得税や法人税などの税金は、こちらの直接税に該当します。
間接税について
間接税は、直接税とは違い、納税義務のある方が直接税務署納めるわけでなく、一度別の方に渡し、預かった方が税務署に納めるというものです。
そのため、税を負担する人物、納める人物はイコールになりません。
代表的な間接税の例としては、入湯税が挙げられます。
こちらは、温泉施設を利用した方が、その施設を運営する事業者に対して支払う税金であり、実際税務署に納めるのは運営事業者になります。
運営事業者は、温泉の利用者から一旦入湯税を預かり、その後手続きを行って、税務署に納めるため、前述の通り、税負担者と納税者はイコールになっていません。
消費税における納税までの流れ
私たちが店舗で商品を購入したり、サービスを受けたりした際には、基本的に税込価格を支払います。
こちらは、商品やサービスの代金に消費税が上乗せされた金額であるため、こちらを支払った時点で、私たちは消費税を負担していることがわかります。
また、こちらは商品やサービスを提供する店舗、事業者が一度預かる形になり、その後税務署に支払われます。
つまり、消費税における納税までの流れを見ると、どう考えても間接税という扱いになるのが一般的だということです。
消費税が間接税ではない理由
では、消費税が間接税ではないとされる理由は、一体何なのでしょうか?
その答えは、他の間接税における法律上の定義を確認すればわかります。
例えば、先ほど解説した入湯税に関しては、法律上以下のように定義されています。
「鉱泉浴場における入場に対し、入湯客に入湯税を課すものとする」
こちらは文字通り、温泉を利用した方に入湯税を課すことを意味しています。
また、入湯税の徴収については、「特別徴収の方法によらなければならない」とされています。
ここでいう特別徴収とは、先ほど解説した間接税における納税方法を指しています。
簡単にいうと、温泉施設の利用者が、温泉に入るたびに役所に入湯税を納めにいくことは現実的ではないことから、温泉施設の窓口に入湯税を支払い、それを事業者が後々税務署に納めるというものです。
その他でいうと、ゴルフ場利用税における法律上の定義にも、入湯税と同じようなことが記載されています。
ゴルフ場利用税は、「ゴルフ場の利用に対し、その利用者に課する」と定義された税金であり、ゴルフ場を利用した方が一度運営事業者に支払い、それを後々、事業者が税務署に納めます。
こちらは、いわゆる“預かり金”という形であり、法律上でこのような形式であることが定義されている入湯税やゴルフ場利用税は、完全な間接税だと言えます。
しかし、消費税は法律上、こちらの入湯税と同じような定義がされていません。
つまり、私たちが事業者に支払っている消費税は預り金ではないため、間接税とはならないということです。
どういうことなのか詳しく解説します。
法律上の消費税における定義
消費税における法律上の定義は、以下のようになっています。
「事業者は、国内において行った課税資産の譲渡等につき、この法律により消費税を納める義務がある」
先ほどの入湯税、ゴルフ場利用税と異なるのは、“利用者が負担するもの”という記載が一切ないという点です。
商品やサービスなどを提供する店舗、事業者に納税義務があるということしか記載されていません。
つまり、消費税は法律上、私たち国民が必ずしも負担しなければいけない税金ではないということです。
また、間接税の定義は、納税義務者のある方が預かり金のような形で事業者等に税金を預け、それを預かった事業者が後々税務署に納めるというものであるため、消費税はこちらに該当しないということになります。
ちなみに、国税庁のタックスアンサーには、消費税について「事業者でない者は納税の義務はありません」と記載されているため、私たちが消費税を支払い続けているという現状は、実は不思議でおかしい話なのです。
まとめ
ここまで、消費税が実は間接税ではないとされる理由について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
消費税は、他の間接税と似たような形式で納められていることから、間接税扱いにされがちですが、商品やサービスを利用する消費者に納税義務があるわけではありません。
そのため、非常に特殊な税金であり、なおかつ波紋を呼びやすい性質を持っていると言えます。