“フリーランス保護新法”とは?

時事ネタ

近年、フリーランスで働く方の人口は増加していますが、その一方で、フリーランスにおける仕事上のトラブルが問題視されています。
そこで政府によって提案されたのが、“フリーランス保護新法”という新しい法律です。
ここからは、フリーランス保護新法の概要や内容などについて解説したいと思います。

フリーランス保護新法の概要

フリーランス保護新法は、フリーランスの取引を適正化するための法律であり、2022年9月に政府が公表した“フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性”が由来となっています。
今月28日、参院本会議で可決、成立したもので、立場の弱いフリーランスが不利益を被らないような内容が盛り込まれています。
また、こちらの法律は来年秋までに施行される予定であり、大きな注目を集めています。

フリーランス保護新法導入の背景

冒頭でも少し触れましたが、フリーランス保護新法導入の主な背景には、フリーランス人口の増加、フリーランスが巻き込まれるトラブルの多さが挙げられます。
内閣官房の調査によると、2020年時点での国内のフリーランス人口は、約462万人にも上るとされています。
こちらには、副業で働く方も含まれますが、新しい働き方としてフリーランスを選ぶ方が増えているのは事実です。
その一方で、フリーランスは一般的な企業と比べて立場が弱く、頻繁にトラブルに巻き込まれています。
特に多いのが契約関連のトラブルで、「契約内容が曖昧」「極端に単価が低い」「一方的に契約を打ち切られた」といった事例が代表的なものとして挙げられます。
現行の法律では、このような状況に対処するのが難しいため、政府はフリーランス保護新法を施行し、問題解決を目指しています。

フリーランス保護新法の内容

フリーランス保護新法では、フリーランスに業務委託を行う事業者に対し、以下の5つの項目遵守を示しています。

・業務委託の開始、終了、内容、報酬に関する書面の交付・提供義務
・不特定多数に対して委託募集をする際の表示内容の義務化
・60日以内での報酬支払いの義務化
・フリーランスに対する不当な扱いの禁止
・ハラスメント対策や出産、育児、介護への配慮など、労働環境整備に努める

フリーランスに業務を委託する事業者は、きちんと業務に関する詳細を書面にし、メール等で提供しなければいけません。
また、クラウドソーシングやSNS等で業務委託先を募集する際、業務内容を明記したり、業務提供を完了した日から60日以内に、報酬を支払ったりすることも求められます。
その他、不当な受領拒否、報酬減額、返品なども禁止され、フリーランスが働きやすい環境を整える努力義務も発生します。
ちなみに、フリーランス保護新法に違反した事業者は、国による立ち入り検査や勧告、公表、命令などが行われ、命令違反や検査拒否をした場合には、50万円以下の罰金が科せられます。

フリーランス保護新法導入のメリット

フリーランス保護新法が導入されることにより、当然ながらフリーランスの保護は加速します。
フリーランスの買い叩きや一方的な契約破棄、業務の無茶振りといったことが減少する可能性も高く、トラブルに遭遇したときの対処も簡単になります。
また、フリーランス保護新法導入のメリットとしては、フリーランスの線引きがわかりやすくなることも挙げられます。
これまで、フリーランスの定義はかなり曖昧であり、どこの範囲までをフリーランスとするのかは明確ではありませんでした。
その点、フリーランス保護新法では、従業員を使用しておらず、業務を委託される事業者をフリーランスと定義しているため、業務委託を行う事業者も対応しやすくなることが予想されます。

フリーランス保護新法の懸念点

フリーランス保護新法が実際に施行されることで、フリーランスの労働環境は良くなる可能性が高いですが、懸念される点もあります。
フリーランスに業務委託をする事業者の中には、「雑に、気軽に発注できるから」という理由でフリーランスを選んでいるところも少なくありません。
しかし、フリーランス保護新法が施行されれば、このような事業者もルールを遵守しなければいけません。
このことから、フリーランスへの業務委託を控える事業者が増加することは十分に考えられます。
また、フリーランス保護新法では、一方的な契約破棄などの被害を受けたフリーランス自身が申告をしなければ、法律によって守ってもらうことができません。
フリーランスは、中小企業庁などのように違法な取引を取り締まる機関がなく、基本的に自己申告で対処せざるを得ないため、契約終了などを恐れて申告しないフリーランスが多い場合、こちらの法律はあまり活用されない可能性があります。

まとめ

ここまで、フリーランス保護新法の詳細について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
時代の変化とともに、フリーランスが活躍の場を広げていることは事実ですが、法で守られにくい分、人数が増えるたびにトラブルも増加しています。
フリーランス保護新法がうまく機能し、フリーランスにとっても、業務委託をする事業者にとっても、プラスの効果が出ることを期待しましょう。

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