LGBT理解推進法はなぜ論外なのか?

時事ネタ

LGBT理解推進法は、自民党性的指向・性自認に関する特命委員会が法制化を進めている法案です。
現在も、着々と議論が進められているこちらの法案ですが、実際には有識者などに「論外」と揶揄されるケースが多く見られます。
今回は、なぜそのような評価を受けているのかを中心に解説します。

LGBTの概要

そもそもLGBTとは、さまざまな性的マイノリティのうち、代表的なレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの4つの頭文字を取った総称です。
レズビアンは、自身を女性として認識しながら女性を愛す性のあり方、ゲイは自身を男性と認識しながら、男性のことを好きになる性のあり方を指しています。
また、バイセクシャルは、男女両方ともを好きになる方で、トランスジェンダーは、心と身体の性が一致していない方、つまり心は男性、身体は女性、もしくはその逆である方をいいます。
日本国内におけるLGBTの割合は、11人に1人と言われていて、このような方々は、職場や書類手続きなど、あらゆるシーンで偏見や差別に苦しんだり、問題が発生したりしています。

LGBT理解推進法とは?

LGBT理解推進法は、自民党性的指向・性自認に関する特命委員会が法制を進めている法案であり、正式名称は“性的指向および性同一性に関する国民の理解推進に関する法律”といいます。
差別禁止を前提とせず、あくまでLGBTに関する基礎知識を広く伝えるための法案であり、時間はかかるものの、確実に理解が深まる点、一人の差別主義者も出さない点、今後のLGBTに関する施策すべての基礎となる点などがメリットとして挙げられています。
ちなみに、こちらを理解推進法ではなく、差別禁止法とした場合、対立を煽ったり、不注意な発言が差別と断定されるリスクがあったりと、懸念される点が多いとされています。

LGBT理解推進法が「論外」と評される理由

LGBT理解推進法が論外と評される理由の1つに、何が差別に当たるのが明示されていないという点が挙げられます。
LGBT理解推進法は、差別禁止を前提としていないという話をしましたが、理解を促すということは、「可能な限り差別をなくしたい」と言い換えることができます。
差別の定義がなければ、解釈が恣意的に拡大され、活動家に悪用されるおそれもあります。
わかりやすくいうと、一般的には差別とは言い難い表現についても、「この表現は差別に該当する」という風に拡大され、認識に個人差が生じ、社会が混乱するリスクです。
また、LGBT理解推進法が論外とされる理由には、性的少数者の子どものいじめを減らすにあたって、機能するものではないという点も挙げられます。
LGBT理解推進法が必要な理由として、レズビアンやゲイといった性的少数者の子どもがいじめられていることを主張する声があります。
もちろん、いじめはどのような理由であろうと、決して許されるものではありません。
しかし、いじめはそのような原則を理解した上で、周囲の大人や教師が指導すべきものであり、LGBT教育が足りないからというのは、少し方向性が異なります。
むしろ、幼少期から特定のLGBTイデオロギー(人間の行動を左右する根本的なものの考え方)を教え込むことで、性観念が不安定な子どもたちを混乱させかねません。

LGBT理解推進法は強い法的な力を持たない

LGBT理解推進法が論外と評される主な理由は、内容に不明瞭な点が多いことや、活動家や推進者の思惑通り機能する可能性が低いことなどが挙げられます。
また、もしLGBT理解増進法が成立したとしても、こちらの法的な力は決して強くありません。
なぜなら、成立後も同性婚や差別禁止は認められないからです。
つまり、差別禁止法に近い内容や拘束力がなければ、LGBT理解増進法の存在意義はほとんどないということです。
実際、日本は他国に比べ、LGBTに関する法律の整備が極端に遅れています。
35の先進国をランキングにしたものを見ると、日本は35ヶ国中ワースト2位の34位となっています(35位はトルコ)。
例えば、同性婚については、2001年、世界で初めてオランダが認める法律を作った後、ベルギー、スペイン、カナダなどが続き、2013年以降はこちらの動きがさらに加速しています。
保守的な価値観が根強く残るアメリカですら、2015年、連邦最高裁が「認めないことは法の下の平等に反する」と判断し、2022年12月に法制化されました。
日本は、このように世界的なLGBTをめぐる取り組みの加速化があったにもかかわらず、いまだに同性婚やそれに準ずる制度を認めず、差別を禁止する法律もありません。
こちらは、20年以上もの間、変わることのなかった事実であり、今後LGBT理解増進法が成立したところで、大きく日本における法整備が変わるとは考えにくいです。

まとめ

ここまで、LGBT理解増進法が論外と評される理由を中心に解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
LGBTの方々は、日々辛い思いをしたり、苦しんだりしながらも、社会の中でしっかりと人生を歩んでいます。
もちろん、このような方々への配慮やリスペクトは必要ですが、LGBT理解推進法がその根幹として役割を担うことに関しては、現時点では問題や疑問が山積していると言えます。

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