政教分離について考える

時事ネタ

安倍晋三元総理が死亡したことで、国葬を執り行うということが決定されました。
それに関連して、政教分離について考える人が出てきているのですが、政教分離は普段気にすることがあまりないことも多いため、よくわからないという人もいるでしょう。
政教分離がどのようなものか、解説します。

政教分離とは?

安倍晋三元総理が銃撃によって死亡するという衝撃的な事件があり、岸田文雄首相はその葬儀として国葬を執り行うことを決定しました。
しかし、このことで様々な物議を醸しだすこととなっています。

まず、首相の葬儀は原則として内閣・自民党合同葬という形で行われることとなっていて、戦後に総理大臣経験者が国葬となったのは1967年の吉田茂の葬儀だけです。
そして、過去にあった国葬令は現行の憲法に定められた政教分離によって失効していることも、反対される理由となっています。

政教分離の原則というのは、国家は宗教団体と分離されていなければならない、ということを言います。
国家は、政府や君主などを指すこともあります。

この原則は世界中の多くの国で定められているのですが、厳しさは国によって異なります。
例えば、フランスでは分離型と言われるタイプで、国家が宗教的活動をすることは一切禁止されています。

それに対して、イギリスの場合はそれぞれの宗教を国家が平等に扱っていればいいという、融合型と言われる緩やかな分離となっています。
これ以外には、同盟型と言われある程度の協力体制関係を保っていることもあります。

フランス以外で分離型となっているのは、アメリカ合衆国やメキシコ、トルコ、エストニア、ハンガリー、オーストラリアなどがあります。
また、日本も戦前は神道が事実上の国教でしたが、戦後は分離型となっています。

融合型は国教型とも呼ばれ、イングランド国教会を国教とするイングランド、カトリックを国教とするマルタ、コスタリカ、モナコ、ルター派教会を国教とするデンマーク。ノルウェー、アイスランドなどがあります。

また、社会主義国では上記の分類から外れる点もあります。
かつて存在した国家でいうと、ロシア帝国では国教をロシア正教会と定めていて、1905年に出された勅令によってそれ以外の信仰の自由が容認されました。

ソビエト連邦も政教分離の原則は採用していましたが、無神論という宗教による政教一致ともいわれていて、教会は法人格をはく奪されて信教の自由が保障されず、財産も没収されました。

そして、無神論国家として宗教弾圧も行っており、ロシア正教会の司教の多くが処刑、あるいは投獄されています。
スターリンは政教和解の方針でしたが、フルシチョフ政権になると弾圧が再開され、ゴルバチョフ政権になって政教和解の申し入れがあって初めて信教の自由が認められました。

現在のロシア連邦は世俗主義と言われ、信教の自由が保障されて国家と宗教団体は分離しています。
しかし、その中でも正教は特別なものとして事実上の国教となり、それ以外の宗教は伝統宗教とされています。

中華人民共和国では、中華人民共和国憲法によって公民の信教の自由、および無神論を喧伝する自由が認められています。
しかし、中国共産党の党員に限っては宗教の信仰を禁止されています。

朝鮮民主主義人民共和国でも、朝鮮民主主義人民共和国社会主義憲法によって公民の信教の自由は保障されています。
キリスト教会や仏教の寺院などの他に、統一教会の施設もあります。

日本における政教分離

この政教分離ですが、日本ではあまり気にされることがありません。
なぜかというと、日本ではそれほど宗教を意識することが少ないからです。
その点が、海外とは異なります。

日本人の多くは、仏教徒です。
しかし、日常生活で仏教の教えを意識しているという人は少ないでしょう。
また、初詣などで神社に行くこともありますが、神道についてもやはり意識している人は少数です。

かつて、日本において天皇は現人神と呼ばれていました。
それをトップとする国家運営では、政教分離されていたとは言い難いでしょう。
ただし、これは国家統合のための方針であり、宗教とは若干異なっていたのです。

戦後は人間宣言が出され、天皇は神ではないということが宣言されています。
そして、軍国主義の愛国心教育では神道が利用されていて、それ以外の宗教には圧力がかけられていたのですが、1945年にGHQによって国家神道が廃止され、日本国憲法が定められて政教分離が実現されました。

憲法では、信教の自由が保障されるとともに特定の宗教団体が国から特権を受けることが禁止され、国は宗教教育や宗教活動を行ってはならないと定められています。
また、宗教組織や団体の使用、維持などのために公金や公の財産を支出してはいけない、ということも定められました。

日本では、宗教団体が特定の政治団体や政治家を支持することなどは認められていますが、それに対して見返りを与えることは禁止されています。
また、政治家が靖国神社を参拝するのは政教分離の原則に反するのではないか、ということも時折言われていますが、伊勢神宮などの参拝には批判の声が少ないため、実際には靖国神社への政治的意図による批判と言われています。

まとめ

日本では、宗教自体をそれほど意識している人が少ないことから、政教分離はほぼ問題なく浸透していると言えるでしょう。
また、時折言われる公明党に関しては、創価学会という宗教団体が公明党を支持しているだけなので、憲法でも認められている内容となっています。
国葬令は政教分離によって廃止されたとはいえ、国葬はその後も実際に行われているものです。
そのため、国葬自体を執り行うことは特に問題ないでしょう。

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