10万円出産クーポンが批判される理由

時事ネタ

日本政府は、妊娠または出産のあった世帯に対し、10万円相当のクーポンを支給する仕組みについて、2023年1月に実施することを発表しました。

しかし、SNSなどでは、こちらの施策に対する批判の声が多数寄せられています。

今回は、10万円出産クーポンの概要と、批判が噴出している理由について解説したいと思います。

10万円出産クーポンの概要

10万円出産クーポンは、名前の通り妊娠・出産のあった家庭に自治体が10万円相当のクーポンを支給し、そのクーポンと引き換えに指定の育児用品、子育て支援サービスを提供するというものです。

正確に言うと、妊娠届と出産届を提出した世帯が対象の制度であり、2023年1月以降の出産であれば、全額を受け取ることが可能です。

2022年4月~12月に産まれた子どもには、出生時の5万円のみが支給されます。

また、クーポンは妊娠時と出産時に分けて支給され、最大でそれぞれ5万円ずつの計10万円となります。

岸田首相は、今年10月に行われた参議院予算員会において、「産前産後の孤独孤立、育児不安を抱える妊産婦、子育て世帯への支援を強化するのが喫緊の課題」と答弁しています。

このような危機感の背景には、少子化が年々加速する一方で、厚生労働省の調査によると、死亡事例のうち児童虐待が占める割合は0歳が65.3%ともっとも多く、3歳未満では7割にも上ることがあります。

そして、近年は新型コロナウイルスによる産み控えも問題視されていて、10万円出産クーポンは、これらの問題を解決するための打開策として打ち出されています。

10万円出産クーポンに批判が集まる理由

出産準備金として10万円分のクーポンを支給する当制度について、歓迎する声が多いかと思いきや、実際のSNS上における反応は冷静で、批判的なものが多いです。

また、10万円出産クーポンに批判が集まる理由としては、主に以下のことが挙げられます。

・金額の少なさ
・クーポンでの支給
・3歳以上は対象外

まず批判が多く集まっているポイントは、10万円という金額の少なさです。

妊娠が発覚してから出産に至るまでには、定期健診や入院、分娩や里帰りなど、さまざまなことに対して費用が発生します。

当制度は、新型コロナウイルスの影響による産む控えの解決が1つの目的とされていますが、10万円という金額では、上記の費用を十分に賄うのは困難であり、こちらの支援だけで出産を決意する世帯が増加するのかについても、懐疑的な意見が多いです。

また、単純に「なぜクーポンでの支給なのか?」という批判も多く集まっています。

具体的には、「現金ではなく、クーポンで支給することにより、無駄な事務局経費がかかるのではないか」という声や、「クーポンからまたさらに育児用品、子育て支援サービスに変換するのがまどろっこしい」という声が多く寄せられています。

岸田総理は、「自治体の判断で、現金給付もオプションとして排除されない」と説明していますが、こちらは「自治体によって現金給付される場合もあれば、されない場合もある」と言っているようなものであり、現金化の動きはどこまで進むのか不透明です。

その他、0~2歳の子どもがいる世帯のみが対象であることも、当制度が批判を浴びている理由の1つです。

子どもに関する費用がかかるのは、当然妊娠時、出産時だけではありません。

教育費は、子ども1人につき数千万円単位で必要になるものであり、3歳以上の子どもを持つ世帯に対しては、一切支給がないことに対し、厳しい意見をする方も少なくありません。

政府に求められる他の子育て支援について

批判の内容を見ていただけるとわかるように、10万円出産クーポンは、あくまで少子化対策や子育て支援の1つに過ぎません。

政府には、以下の問題への早急かつ抜本的な対策が求められます。

・働きながら育児をする環境の整備
・高騰する教育費への対策

子育て支援は、10万円出産クーポンのような給付だけでは成立しません。

近年、共働き世帯は非常に多くなっていて、共働きでなければ十分に稼ぎを得ることができないというケースも多いです。

そのため、働きながら育児をする環境の整備は急務です。

具体的には、従業員の育児と労働の両立に非協力的な事業者、法令違反を犯した事業者に対し、ある程度重いペナルティを与えるなど、実効性を持たせる取り組みが必要だと言えます。

その他、高騰する教育費への対策も重要です。

経済が停滞し、親の所得が伸びないにもかかわらず、依然として教育費は高騰の一途を辿っています。

また、子育て世代の中には、いわゆる就職氷河期世代をはじめ、貸与型奨学金の返済に苦しんでいる方も数多くいます。

このまま教育費高騰への対策を打たなければ、親子2世代、3世代とこのような負担が積み重なっていくことは目に見えています。

まとめ

ここまで、10万円出産クーポンに批判が集まっている理由を中心に解説しましたが、いかがでしたでしょうか?

10万円出産クーポンの方針はほぼ固まっていますが、実際されるまでの数ヶ月間、あるいは実施開始後に、内容が変更されることは十分にあります。

また、政府による新たな子育て支援制度に関しても、今後打ち出される可能性はあるため、動向には注目しておきたいところです。

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