今川氏真の嫁「早川殿(糸)」

歴史

早川殿(糸)は北条家出身で、氏真の正室です。
今川氏真と言えば、信長に負けた父親の跡を継いだことで統治も苦労して衰退し、放浪生活となったのですが、それをそばで支え続けたのが早川殿です。
どのような人物なのか、その生涯やエピソードなどを紹介します。

早川殿(糸)の生涯

早川殿(糸)は、相模国を治めていた戦国大名である北条氏康の娘です。
生まれた年や生母などは明らかになっておらず、氏康の庶出の長女で北条氏政の異母妹と考えられていたのですが、近年になって氏政の同母妹であり、嫡出の女子という説も出てきています。

また、実名も不明です。
法名から、蔵春院殿、蔵春院と称されることもあります。
また、ドラマに登場した際は、糸や春という名前になっていました。

1554年に、武田・北条・今川氏の3者の間で甲相駿三国同盟が結ばれ、早川殿はその婚姻政策の一環として今川氏真の元に嫁ぎました。
氏真は当時17歳で、早川殿が庶子という説が正しければ年上だったと言われています。
その後、男4人と女1人の5人の嫡子を産んでいます。

なお、甲相駿三国同盟ではほかにも婚姻による同盟の強化が行われていて、今川家の娘である嶺松院は武田家に嫁ぎ、武田家の娘の黄梅院は北条家に嫁いでいます。
そして、同盟が結ばれたことで武田家と北条家、今川家はそれぞれ信濃国全域、関東、尾張国を攻略するため、それぞれ勢力を拡大していきます。

今川氏真は、桶狭間の戦いで討ち取られた父の義元の後を継いで、当主となりました。
今川家は駿河国を中心として勢力を拡大していたのですが、戦に敗れたことで多くの国人が亡くなり、今川家から離反する動きも増えていたため、苦労したと思われます。

そして今川家は次々と領地を失っていき、さらに氏真の叔父である武田信玄が徳川家康と手を組んで、駿河国へと攻め入ります。
氏真はそこを明け渡し、掛川城へと逃亡します。
実は、この時は乗り物すら用意できず、徒歩で移動しました。

当然、早川殿も氏真についていきます。
そして、娘が窮状に陥っていることを知った北条氏康は氏真の支援に乗り出したものの、翌年には家康によって掛川城は開城させられ、今川家は滅亡してしまいます。

氏真と早川殿は、1570年に北条氏康を頼って小田原・早川の屋敷に移り住みます。
そして、この年に早川殿は氏真の嫡子となる範以を出産します。
結婚から16年が経ち、氏真は33歳になっています。

しかし、その翌年に氏康が死去し、後継は早川殿の弟である氏政となったのですが、氏政は武田具と和睦して氏真を殺そうと画策します。
囲まれてしまった氏真と早川殿は、家康を頼って浜松に身を寄せます。
今川家滅亡の要因である家康には思うところもあるものの、他のあてはないのです。

同盟で婚姻した夫婦は3組ありましたが、他の2組は同盟の破棄と共に離縁しています。
しかし、早川殿は三国同盟が破棄された後も離縁せず、氏真を支え続けてきました。
まさに、妻の鏡でしょう。

早川殿(糸)のエピソード

早川殿は、今川氏真と生涯より沿って生きていった女性であり、4男1女を出産していることからも夫婦仲は悪くないということが予想されます。
そんな早川殿のことがよくわかるエピソードには、どのようなものがあるのでしょうか?

まず、氏真と婚姻を結んだのは政略結婚であり、全く知らない相手でした。
当時としては当たり前でしたが、それでも5人もの子どもを産んでいることから夫婦仲はよかったと思われます。

また、氏真側でも早川殿のことを憎からず思っていたことが、子どものことからわかります。
というのも、第一子は娘だったのですが、娘が生まれたのは1567年頃のことでした。

結婚したのは1554年のことだったため、子どもが生まれるまでは13年ほどかかっています。
この時代であれば、結婚から数年が経過しても子供ができなかった場合、側室や離縁を考えることが多いでしょう。

今川氏真と早川殿は政略結婚なので離婚はできなかったとしても、側室を迎えることはできたでしょう。
実際に有力国人の娘を側室にしたという記録はありますが、子どもを産んだ記録などはないため一時的なものだったと推測されます。

こういったことから、早川殿の情が深かったことはもちろん、氏真も早川殿を愛していて側室などは考えられなかったのではないかと思われます。
16年後に嫡男が生まれてからも、さらに3人の男児を産んでいることからもわかるでしょう。

ちなみに、早川殿の容姿については記録が残ってないため、特に優れていたかどうかはわかりません。
それほど極端な美人ではないものの、不細工というわけでもないかったのでしょう。

まとめ

早川殿は、今川氏真の妻として生涯にわたり、苦難の道を進む氏真を支えていきました。
今川家が滅亡して放浪生活となった時も、一緒に移り住んでいったのです。
また、同盟のための婚姻でしたが、同盟が破棄された後も別れずに氏真のそばにいて4男1女を産んでいます。
妻として、深い愛を持つ早川殿は、理想的な女性と言えるでしょう。

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