皆さんは、“スクランブル放送”というものをご存じでしょうか?
これは、簡単に言うと1つの放送技術であり、長年受信料の未払いが問題となっているNHKにおいて、今後導入される可能性があるとして、注目を集めています。
今回は、スクランブル放送の概要や仕組み、導入の可能性などについて、具体的に解説します。
スクランブル放送の概要、仕組みについて
スクランブル放送とは、映像や音声の信号を暗号化し、限られた人にしか受信できないようにする放送のことを言います。
単に“スクランブル”と呼ばれたり、“スクランブル方式”や“スクランブルシステム”と呼ばれたりすることもあります。
具体的には、テレビ放送用のデータを一定のルールに基づいた鍵によって暗号化することで、信号波を電気的に攪拌するというものであり、“限定受信方式”というデジタル放送の管理方法の1つに数えられます。
不正な視聴、あるいはコピーを防ぎ、権利を守るための放送技術であり、日本では、すでに有料放送の“WOWOW”や、“スカパー!”などで採用されています。
受信料の未払いが問題になっているNHKに対しても、スクランブル放送の導入を望む声は多いです。
実際、過去には、「NHKをスクランブル放送にすればいい」という内容の投書がツイッター上で拡散され、5,000回以上リツイートされたことも確認されています。
もし、NHKでスクランブル放送が導入されるようなことがあれば、“観たい人は払う”、“観たくない人は払わない”という、現在とは違った構図が出来上がることになります。
そもそも、受信料はなぜ支払わなければいけないの?
そもそも、NHKにおける受信料は、なぜ支払わなければいけないのでしょうか?
現行の放送法によると、第64条の中に、「協会の放送を受信することのできる“受信設備”を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」という記載があります。
ここで言う協会とは、日本放送協会、つまりNHKのことを指しています。
つまり、NHKの受信料を支払わなければいけない理由は、NHKの受信が可能な設備を設置した時点で、NHKと契約しなければいけないということが、放送法によって定められているからだということです。
ただ、この法律には、非常に曖昧な点が1つあります。
それは、“受信についての契約をしなければならない”と記載されているものの、“受信料を支払わなければならない”とは、どこにも記載されていないという点です。
したがって、たとえ受信料を支払っていない方がいたとしても、それが法律違反となるのかどうかは、とても難しいところだと言えます。
とはいえ、受信設備を設置した人に義務付けられたNHKとの契約内容には、“受信料を支払う“という項目があります。
そのため、NHKとの契約義務が生じた時点で、必然的に支払い義務も発生していると解釈することができ、受信料は支払うべきものだと考えるのが一般的と言えるでしょう。
NHKの受信料支払い率について
先ほど、NHKにおいては、受信料の未払いが問題になっているという話をしましたが、現在の支払い率は、具体的にどれくらいなのでしょうか?
NHKが発表したデータによると、“2018年度末 受信料の推定世帯支払い率(全国・都道府県別)”は、全国値で81.2%となっています。
これは、2017年度と比べると、1.8ポイント上昇していることになります。
ちなみに、このデータでは、全国値を上回る都道府県が39あるのに対し、全国値を下回る都道府県も8あるということもわかっています。
つまり、少しずつ支払い率は上昇していきているものの、いまだに全体の約20%は未払いであり、都道府県別で言うと、さらに支払い率が低い都道府県も存在するということです。
いまだに支払い率が低い都道府県も多い理由には、やはりNHKとの契約義務が、受信設備を所有しているだけで発生することが挙げられるでしょう。
要は、「なぜ観ないのに受信料を払わないといけないの?」と考える方が多く、それが支払い率の低い都道府県を生み出しているということです。
NHKはスクランブル放送の導入に難色を示している
NHKでスクランブル放送が導入されることになれば、NHKは言わば通常の有料放送となんら変わらない性質を持つことになります。
また、「なぜ観ないのに受信料を払わないといけないの?」という声もなくなるでしょう。
ただ、NHKは、このスクランブル放送の導入に難色を示しています。
その理由としては、NHKは“公共放送”であり、特定の利益や視聴率に左右されず、社会生活の基本となる正確な情報が提供できる、または豊かな文化を育む番組を、誰に対しても分け隔てなく提供することが役割であることが挙げられます。
具体的には、NHKは災害の発生時、災害に関する情報を迅速に提供しており、教育番組、福祉番組など、視聴率では計れない番組も数多く放送しています。
NHKがスクランブル放送を導入することは、確かに合理的な方法ではありますが、もし導入してしまうと、NHKは公共放送としての役割を全うできなくなってしまいます。
なぜなら、特定の人に受信を限定してしまうと、情報などを“誰に対しても分け隔てなく提供する”ということができなくなるためです。
また、NHKは、スクランブル放送を導入すると、どうしても“視聴率が良い番組”に放送内容が偏ってしまい、内容のマンネリ化が起こる可能性も危惧しています。
そうなると、結果的に視聴者にとって、番組視聴の選択肢が狭まり、放送法における“健全な民主主義の発達”の上でも、問題が出ると考えているのです。
つまり、NHKもスクランブル放送を導入すること自体は、合理的であると認めているものの、現在は、まだ実際導入するというところまで話が進んでいないということです。
今後導入される可能性はゼロではない
NHKは、本来の公共放送の役割を果たせなくなることを危惧し、スクランブル放送の導入には否定的な姿勢を取っています。
ただ、NHKにおいて、今後スクランブル放送が導入される可能性はないのかというと、決してそうではありません。
なぜなら、このままの状態が続くと、NHKと市民の溝はなかなか埋まらないことが予想されるためです。
実際、NHKの受信料支払い率は、年々少しずつ上昇しているものの、NHKのスクランブル放送導入を唯一の目標とする“NHKを国民から守る党”が、参議院で1議席を獲得したことからも、“スクランブル放送導入肯定派”が多いことは明らかです。
N国の現在の動きについて
NHKから国民を守る党、通称“N国”は、先ほども触れたように、NHKのスクランブル放送導入を最終的な目標とする、いわゆる“単一論点政治”を行う政党です。
また、N国党首である立花孝志氏は、この目標が達成された際には、党を解党し、自らも議員を引退することを明言しています。
そして、そんなN国党首の立花氏は、現在も積極的に首長選挙に出馬し、独自の選挙戦を展開しており、「今後もどんどん首長選挙に出る」と発言し、党勢拡大に向けた手ごたえと、各種選挙に立候補を重ねる意向を示しました。
このような、N国党首の積極的な動きからも、NHKのスクランブル放送導入は、決してありえない話ではないと言えます。
まとめ
ここまで、今後導入されるかもしれない“スクランブル放送”について解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
NHKにおけるスクランブル放送導入の行方には、誰もが納得するような着地点が見つからない限り、今後も大いに注目が集まることになるでしょう。
現時点では、決して導入されることはない、あるいは必ず導入されると断言することはできません。