日本を含む世界各国において、新型コロナウイルスの感染拡大が起こってから久しいですが、いまだにこちらが沈静化していない現在において、新たな疾患の拡大が問題視されています。
それが、今回解説する“サル痘(さるとう)”です。
今回は、サル痘の概要や症状、感染経路や予防法などについて解説します。
サル痘の概要
サル痘は、サル痘ウイルス感染による急性発疹性疾患であり、感染症法では4類感染症に位置付けられています。
4類感染症とは、主に動物間で流行する病気、飲食物などを介して人に感染する病気を指し、基本的には動物から人に感染するものとされています。
また、サル痘は主にアフリカ中央部から西部にかけて発生していて、自然宿主(自然界で寄生体と共生している宿主)はアフリカに生息するげっ歯類(ネズミ、リス、ヤマアラシなど)とされていますが、詳細は不明です。
サル痘の症状
サル痘に感染すると、5~21日間(平均12日間)の潜伏期間を経て、以下のような症状が出始めます。
・発熱
・強い頭痛
・リンパ節の腫れ
・筋肉痛
・強い倦怠感
発症から1~3日後には、水疱(水ぶくれ)が顔に出現し、やがて全身に広がります。
水疱は特に、顔以外では手のひらや足の裏にできやすく、口の粘膜や目、生殖器に出現することもあります。
出現から10日ほどでかさぶたになりますが、こちらのかさぶたが消えるまでには3週間程度かかります。
ちなみに、サル痘の症状は、全般的に発症から2~4週間で自然に回復しますが、小児等で重症化、死亡した症例の報告もあります。
また、重症化した場合には、脳炎や二次皮膚感染、肺炎や眼病(視力低下)などが引き起こされる可能性もあります。
サル痘の感染経路
サル痘の感染経路は、飛沫感染や接触感染、経口感染であり、具体的には以下の通りです。
・咳やくしゃみのしぶきを浴びる(飛沫感染)
・発疹のある皮膚や粘膜に触る(接触感染)
・トイレや風呂、タオル、シーツなどを共有し、発疹や体液や便に排出されたウイルスが直接粘膜に触れたり、手を介して粘膜に感染したりする(接触感染、経口感染)
発熱からすべての痂皮が剥がれるまで、つまりサル痘の症状が少しでも残っている間、その人物には感染力があります。
ちなみに、特に感染に注意が必要な場合は以下の通りです。
① 発症21日以内に、サル痘常在国やサル痘症例が報告されている国に滞在していた
② 発症21日以内に、サル痘常在国やサル痘症例が報告されている国に滞在していた者と接触(皮膚や粘膜との接触や1m以内での会話)があった
③ 発症21日以内にサル痘の患者または①、②を満たす者との接触があった
④ 発症21日以内に複数または不特定の者との性的接触があった
日本におけるサル痘の発生状況について
2022年7月23日、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が、サル痘の世界的な感染拡大が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」である旨を認定したことを受けて、外務省では7月25日、全世界に対してサル痘にかかる感染症危険情報レベル1を発出しました。
その後も感染拡大は広がり、日本国内においては、7月15日に1例目の感染者が報告された後、8月10日までに計4例の感染者が報告されています。
ただし、新型コロナウイルスとは異なり、現時点では感染拡大の兆候はありません。
症状の項目でも解説したように、サル痘の多くは2~4週間程度で自然回復し、致死率は極めて低いです。
また、対症療法が中心であるものの、厚労省は感染拡大防止に向け、約85%の発症予防効果があるとされる天然痘ワクチンの使用を承認しています。
つまり、今後も日本で感染者が判明する可能性はあるものの、過度な心配は不要であるということです。
サル痘の予防法
サル痘の予防法はいたってシンプルであり、基本的な感染対策が有効です。
具体的には、以下の対策を徹底することで、感染のリスクを極限まで下げることができます。
・感染者および有症状者の飛沫、体液等との接触を避ける
・石鹸やアルコール消毒液を使用した手指消毒を徹底する
・流行地ではウイルスを保有する可能性のあるげっ歯類との接触を避ける
・流行地において、げっ歯類の肉(ブッシュミート)に触れたり食べたりすることを避ける
サル痘を疑う症状があった場合は?
サル痘を疑う症状が見られた場合は、すぐに最寄りの医療機関に相談してください。
受診の際は、自家用車など他人との接触をなるべく避ける交通手段を用いるか、やむを得ず公共交通機関を利用する場合は、マスクの着用や発疹部位をガーゼなどで覆う等の対策が必要です。
また、比較的空いている時間帯やスペースを選ぶなど、医療機関においても他人との接触を避けるような行動を心掛けてください。
まとめ
ここまで、新たな感染症として話題になっているサル痘について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
サル痘は、身体の内部と外部の両方で症状が出る病気であり、重症化のリスクもゼロではありません。
しかし、現時点では迂闊な行動を取らず、しっかりと基本的な対策を行っていれば、新型コロナウイルスのように爆発的に感染が拡大する心配は少ないと言えます。