日本における少子高齢化の流れは今に始まったことではありませんが、高齢者人口や高齢化率といった数字は、年々上昇しています。
また、これによって今後起こり得る問題としてよく取り上げられるのが、“2025年問題”です。
今回は、こちらの概要や社会に与える影響、対策などについて解説したいと思います。
2025年問題の概要
2025年問題とは、日本の人口の年齢別比率が劇的に変化し、超高齢化社会となることにより、社会構造や体制が大きな分岐点を迎え、さまざまな分野に影響を与えると予想される問題を指しています。
日本の人口は2010年を境に減少を続け、2025年には約800万人いる団塊の世代が後期高齢者(75歳)となり、国民の4人に1人が後期高齢者という超高齢化社会を迎えます。
逆に、社会保障の担い手である労働人口は減少していくため、受け手とのバランスが保てなくなり、企業や医療、介護などの分野において、対応が難しい場面が増加することが懸念されています。
2025年問題が企業に与える影響
2025年問題が日本の企業に与える影響としては、主に以下のことが挙げられます。
・事業承継問題
・人材不足
・採用困難
中小企業庁のデータによると、2025年までに中小企業、小規模事業者の経営者約250万人が70歳を迎えますが、そのうち約半数の127万人は、後継者がまだ決まっていないとされています。
このような問題を放置していると、2025年までに約650人の雇用、約22兆円のGDPが失われることになりかねません。
また、2025年問題により、労働力が低下することにより、企業の人材も不足することが予想されます。
もちろん、人材が不足することにより、労働者一人一人における負担も大きくなるため、それに伴って離職率も上昇することが想定されます。
その他、企業の適切な人材採用が困難になることも、2025年問題が企業に与える大きな影響だと言えます。
従来、企業選びの重要ポイントは規模や将来性でしたが、近年は介護や育児との両立、副業や時短勤務が可能かどうかなどを重視される傾向にあります。
そのため、これらの基準を満たさない企業は、ただでさえ人材不足の中、さらに新たな人材を採用するのが難しくなってしまいます。
2025年問題が医療、介護、年金に与える影響
2025年問題は、医療や介護、年金といった分野にも影響を与えます。
具体的には、以下のような影響です。
・税負担の増加
・医療機関、医師不足
・介護保険の財源逼迫
・年金システムの破綻
高齢者における医療費自己負担額は原則1割ですが、残りの費用に関しては、国や自治体の財源、つまり税金によって賄われています。
厚生労働省の推計では、医療費の保険給付金額は、2025年には54兆円にもなると試算されていて、こちらは国民の負担となって大きくのしかかります。
また、医療機関や医師の不足も、2025年問題が医療分野に与える大きな影響の1つです。
重篤患者の受け入れや難しい処置、精密検査に関しては、おのずと病床の多い大病院に限られますが、近年は資金繰りの悪化や医師の不足などにより、名のある大病院ですら身売りを始めています。
そして、介護に与える影響としては、介護保険の財源逼迫が問題視されています。
高齢者が比較的軽度の要介護度の場合は、基本的には生計を共にする家族が面倒を見ることで済むかもしれませんが、認知症や寝たきりの高齢者が増えると、特養(特別養護老人ホーム)の需要は高くなり、それに伴って介護費用も膨れ上がります。
その他、年金に関しても、2025年問題の影響を大きく受けることが考えられます。
日本の年金システムは、働く現役世代が納めたお金を高齢者へ年金として給付する賦課方式が採用されていますが、このまま少子高齢化が進行し続けると、働いて納付する人口が少なくなり、受給する人口が増大することは明白です。
2025年問題の主な対策
政府は2025年問題に対し、公費負担の見直しや介護人材の確保、地域包括ケアシステムの構築といった対策を打ち出しています。
これまでは、低所得者の負担軽減や調整など、3年に一度行われる介護保険法改正時保険料の見直しがされてきましたが、今後は国民健康保険などの保険料についての見直しが検討されています。
また、介護業界への参集促進、労働環境や処遇の改善、介護人材の資質向上といった形で、人材確保にもアプローチしています。
そして、地域包括ケアシステムの構築を推進することにより、在宅での医療と介護をスタンダートなものにする動きも出てきています。
地域包括ケアシステムとは、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援という目的のもと、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援、サービス提供体制を整備したシステムをいいます。
今後より高齢化が進めば、認知症高齢者の増加が見込まれることから、認知症高齢者の地域での生活を支えるためにも、こちらのシステムの構築は重要です。
まとめ
ここまで、2025年問題が企業や医療、介護、年金といった分野に与える影響を中心に解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
今後も日本の高齢化が進行することが予想されていて、2025年の10年後には“2035年問題”、さらにその5年後には“2040年問題”が顕在化するとされています。
そのため、政府のみならず企業や医療、介護業界においても、体制の整備や少子化対策は急務だと言えます。