不動産を相続した方は、その物件における相続登記を行う必要があります。
こちらは、不動産登記の1つであり、実施するかどうかについては、現時点では相続人に委ねられていますが、2024年4月から義務化されることになっています。
ここからは、相続登記の概要や義務化のポイントについて解説します。
相続登記の概要
相続登記とは、土地や家、マンションなど不動産の所有者が亡くなった場合に、相続人への名義変更を行う手続きのことを指します。
手続きが必要な理由は、相続登記を怠った場合に不動産の所有者が不明確になることで、トラブルが起きたり、売買が自由にできなくなるなど不利益を被ったりする可能性があるからです。
また、相続登記の期限は現時点では定められていないため、放置しても罰則などは発生しませんが、この度こちらが義務化されることになりました。
相続登記の義務化について
相続登記や所有者の住所変更登記がなされず放置されると、所有者がわからない土地が増え、活用できない不動産が国土の大半を占めてしまいます。
民間有識者でつくられた“所有者不明土地問題研究会”の調査では、この所有者不明土地による経済損失額が2017年から2040年までの累積で、6兆円規模になると発表されています。
これらの状況を鑑みて、かねてより相続登記を義務化することが検討されていて、法案の議論も大幅に進んだ結果、2021年2月10日に法制審議会民法・不動産登記法部会第26回会議において、民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案が決定されました。
政府は3月5日に改正案を閣議決定し、同年4月21日の参議院本会議で成立しました。
そして、2024年4月1日から、相続登記義務化が施行されることになっています。
相続登記の義務化におけるポイント
2024年4月1日から、相続によって不動産を取得した方は、その不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならなくなりました。
相続人が“不動産の取得を知った日から”であるため、単に被相続人が亡くなり、相続の開始を知っただけでは、3年の期間は開始しません。
例えば、父親が亡くなったものの、父親が不動産を所有していたことを知らなかった場合は、相続登記の申請義務の期間は開始しません。
また、その他のポイントとしては、法改正以前に相続した不動産についても、相続登記の義務化の対象となるということが挙げられます。
過去に相続した不動産について、いつまでに登記しなければならないかというと、その不動産の取得を“知った日”または“施行日”、つまり2024年4月1日のいずれか遅い日から3年以内と規定されています。
例えば、父親が亡くなったものの、父親が不動産を所有していたことを知らず、2024年4月1日の施行日後に父親に不動産のあったことを知った場合、相続人の方はその不動産を知った日から、3年以内に相続登記をしなければならないことになります。
施行前から相続による不動産の取得を知っていた場合には、施行日(2024年4月1日)から3年以内となります。
相続登記をしなかった場合のペナルティについて
正当な理由がないにもかかわらず、不動産の相続を知ってから3年以内に相続登記の申請をしなかった場合、10万円以下の過料(金銭の納付を命じる罰則)の適用対象となります。
過料適用の際は、あらかじめ登記官が履行期間を経過した相続人に対して催告(登記の請求)を行いますが、それでも正当な理由なく登記をしなかった場合に、過料が適用されます。
ちなみに、ここでいう“正当な理由”については、主に以下のような例が想定されます。
・関係者が多くて必要な資料を集めるのが難しいケース
・遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース
・申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース など
登記手続きの簡略化について
相続登記の義務化に伴い、登記手続きが簡略化されます。
現状、相続人全員の了承を得て名義変更手続きを行う必要があります。
このまま、相続登記が義務化となった場合、非協力的な相続人がいると、相続登記を行うことが難しくなります。
これを踏まえた結果、登記を簡略化し、スムーズに手続きを行えるようになりました。
具体的には、遺贈のケースと、法定相続分での遺産分割のケースで名義変更手続きが簡略化されます。
被相続人(故人)が相続財産を遺贈する内容を残していたケースでは、遺贈を受ける者が単独で申請可能となりました。
また、法定相続分の相続登記後、遺産分割による名義変更登記が必要なケースでも、不動産の取得者単独で手続きができるようになっています。
まとめ
ここまで、2024年4月に義務化する相続登記について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
親が住宅や投資用不動産を所有しているなど、今後不動産を相続する可能性が少しでもある方は、こちらの法改正について、一度目を通しておくことをおすすめします。
もし、内容を把握していなければ、知らず知らずのうちに申請期間を過ぎ、ペナルティを受けることになってしまう可能性があります。