東京都の“無担保・保証人なしで1,500万円”とは?

時事ネタ

現在、東京都において独自に発表された“外国人起業家の資金調達支援事業”という政策に、大きな注目が集まっています。
具体的には、外国人起業家に対し、無担保・保証人なしで1,500万円を融資する内容の問題点が指摘されています。
今回は、こちらの政策について詳しく解説したいと思います。

外国人起業家の資金調達支援事業の概要

外国人起業家の資金調達支援事業は、東京都が独自に行う政策であり、その名の通り外国人が東京で起業しやすい環境を整備するため、外国人起業家に向けて、金融機関による融資、融資前後の経営支援を行うというものです。
対象となるのは、以下の条件をクリアした外国人起業家です。

・東京都において、事業計画の認定を受けている
・日本国内において、創業した日から5年未満
・事業活動の制限を受けていない在留資格を有する
・東京都内に本店または主たる事務所を置く法人の代表者

融資の条件について

冒頭でも触れた通り、外国人起業家の資金調達支援事業は、1,500万円(運転資金のみは750万円以内)を融資限度額とするものです。
返済期間は10年以内(うち据置期間3年以内)で、融資利率は固定金利で2.7%以内です。
担保や保証人は一切必要ありません。
ちなみに、こちらは金融機関と統括支援機関を通じて行う支援であり、取扱金融機関は株式会社きらぼし銀行、第一勧業信用組合、統括支援機関は令和アカウンティング・ホールディングス株式会社のグループ会社である東京インキュベーション株式会社です。

無担保・保証人なしの問題点について

外国人起業家の資金調達支援事業が注目を集め、物議をかもしている理由の1つに、無担保・保証人なしで1,500万円までの融資が行われることが挙げられます。
東京都産業労働局によると、都にはネットで拡散された内容を元にした抗議電話も複数件寄せられているといいます。
具体的には、無担保・保証人なしであるがゆえに、仮に返済がされなかった場合に、代わりに取り立てる土地や建物などがなければ、海外へ高飛びされるリスクがあるということが批判の原因となっています。
東京都民を中心としたSNSなどでの意見には、「日本人には渋るのに、なぜ外国人には大盤振る舞いなのか」というものが散見されました。

実際は踏み倒しリスクへの対策がされている

いくら外国人起業家を支援するためとはいえ、無担保・保証人なしで1,500万円を融資するというのは、さすがにリスクが高すぎるというのが、国民における大方の意見です。
ただし、実際当制度は、外国人における踏み倒しリスクの対策が実施されています。
外国人起業家は、融資を受けたい場合、都のビジネス支援窓口であるビジネスコンシェルジュ東京に相談し、中小企業診断士による事業計画書のチェックを受けることになります。
その後、東京都が事業の実現可能性などを審査し、都の認定後は、取扱金融機関があらためて審査を実施します。
仮に都が認定を出しても、金融機関が疑問を持てば融資は実行されません。
また、中小企業診断士などのプロフェッショナルが融資の前後からサポートに加わることもあり、継続的に第三者の目が入ることになります。
つまり、高跳びしようにもできない環境は、ある程度整備されているということです。

現時点で認定を受けた外国人起業家はゼロ

2022年8月18日時点において、外国人起業家の資金調達支援事業には、100名以上の申込が行われています。
しかし、いまだに認定された起業家はゼロであり、こちらは東京都の審査が極めて厳しいことを表していると言えます。
現時点では、金融機関審査にまで進んだ起業家すら見られません。
ところが、今度はこのような状況に対し、「認定が0件なのであれば、制度自体存在する意味があるのか」という声も上がり始めていて、今後もしばらく議論は続きそうです。

「東京都は外国人を優遇している」は本当?

当制度は、外国人起業家限定で、無担保・保証人なしの融資を実施する制度というだけあって、前述したように、「なぜ外国人を優遇するのか」という声はとても多くなっています。
しかし、実際は外国人ばかり優遇しているわけではありません。
東京都には、東京都中小企業制度融資「創業」という日本人向けの融資制度も存在し、こちらは3,500万円まで無担保で借りることができます。
外国人起業家の資金調達支援事業は、あくまでこちらの制度の対象を外国人にまで広げたものであり、日本人が蔑ろにされているというわけではありません。
ただし、日本人向けの制度が広く周知されていないことから、東京都のトップである小池百合子都知事は、日本人に冷たく、外国人に甘いという評判になってしまっています。

まとめ

ここまで、無担保・保証人なしで1,500万円が融資される東京都の独自政策、外国人起業家の資金調達支援事業について解説しました。
今後、実際に外国人起業家が当制度の認定を受けるようになって初めて、今回解説したようなトラブルが発生するかどうかがわかります。
都はリスクヘッジに対する自信をのぞかせていますが、新たな問題が浮かび上がってきたときへの対応など、まだまだ不安な点は残る制度だと言えます。

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