ミサイル発射ニュースで出てくる“EEZ”とは?

時事ネタ

「北朝鮮からミサイルが発射された」

このようなニュースや速報を目にしたことがある方は、決して少なくないと思います。

また、ミサイル発射のニュースにおいて、“EEZ”というワードが頻繁に登場しますが、こちらは一体どういう意味なのでしょうか?

今回は、他国のミサイル発射事情とあわせて解説します。

EEZの概要

他国からのミサイル発射ニュースにおいて、「EEZ外に落ちた」「EEZ内に落ちる可能性がある」といった文言がよく見られます。

EEZとは、排他的経済水域のことをいい、Exclusive Economic Zoneの略称です。

こちらは、沿岸国がその範囲内において、天然資源の探査や開発などを含めた経済的活動についての主権的権利と、海洋の科学的調査、海洋環境の保護、保全についての管轄権を有する水域です。

簡単にいうと、漁業や発掘、調査などの活動を、他の国に邪魔されずに自由に行うことができる水域を指しています。

海に面している国は、自国の海(領海)の外側に決められた幅を超えない範囲で、EEZと設定することができます。

また、上記の活動を行う他は、EEZを独占してはいけないというルールがあります。

例えば、他の国の船舶が通過したり、飛行機が上空を飛んだり、他の国が海底にパイプラインを作ったりすることに関しては、禁止することができません。

今年中国のミサイルが日本のEEZ内に落下

022年8月4日、中国が同日に発射した9発のミサイルのうち、5発が日本のEEZ内に落下しました。

中国軍のミサイルが日本のEEZ内に落下するのは、初めての出来事です。

報道によると、これらのミサイルは移動式の発射台によって運用される短距離弾道ミサイルの“東風15(DF-15)”で、射程距離は約900kmとされています。

こちらの出来事を受けて注目されたのが、軍事演習の一環として日本のEEZ内にミサイルを着弾させることは、法的に問題があるのかという点です。

結論からいうと、中国から見た他国である日本のEEZ内でこのような軍事演習を行っても、通常であれば国際法上問題はありません。

EEZにおいて沿岸国に認められるのは、天然資源の探索や開発などの主権的権利、海洋環境の保護および保存、調査に関する管轄権に限定されていて、例えば沿岸国の安全保障に関する権限などは設けられていないからです。

ただし、だからといっていつでもどこでも自由に軍事演習を実施してしまうと、もしかするとそこで操業中の漁業に被害が出てしまう可能性もあります。

そのため、EEZ内で軍事演習などを実施する際には、沿岸国の権利および義務に妥当な考慮を払うことが求められていて、中国側が事前に演習を実施する海域を通告したのは、こちらの妥当な考慮に基づくものと考えられます。

しかし、例えば中国側が日本に対して何らかの要求を伝達し、それを受け入れさせる目的で軍事演習を実施したとすれば、その場合には現在の国際社会における平和と安定の中核である国連憲章において、明示的に禁止されている“武力による威嚇”に該当する可能性があり、そうであれば本件における中国の行動は、国際法に違反することになります。

また、国際法的な問題についてはグレーであっても、本件において中国は日本のEEZ内へ意図的にミサイルを着弾させていて、こちらが日本の安全保障にとって重大な問題であることは間違いありません。

北朝鮮のミサイル発射事情

ミサイル発射と言えば、北朝鮮がすぐに思い浮かぶという方がほとんどだと思います。

2022年に入り、北朝鮮はかつてないペースでミサイルを発射し続けています。

特にここ最近は、9月下旬から10月初めにかけてわずか1週間の間に4回と、ミサイルを相次いで発射しています。

また、10月4日は、約5年ぶりに日本を越える形で、中距離弾道ミサイルと推定される1発を発射しました。

このように、北朝鮮のミサイル発射が相次いで行われている狙いとしては、韓国で5年ぶりの保守政権であるユン・ソンニョル政権が誕生し、米韓合同軍事演習、日米韓の共同訓練も行われ、3ヶ国が結束を固めている中、政治的なメッセージとして発射したとみられています。

その上で、4日のミサイルの飛行距離は、アメリカの基地があるグアムに届くと推定され、こちらの発射は在韓米軍や在日米軍なども視野に入れた、より体系的で緻密な体制を作るための訓練だとみられ、アメリカへの牽制を狙ったとの見方も示されています。

日本のEEZ内にミサイルが落下する場合の対処法

日本には、通信衛星と市町村の同報系防災行政無線、有線放送電話を利用し、緊急情報を住民へ瞬時に伝達する“Jアラート”というシステムがあります。

こちらは、他国のミサイルが日本の領土、領海に落下する可能性または領土、領海の上空を通過する可能性がある場合に使用され、EEZ内などにミサイルが落下する可能性がある場合は使用されませんが、その代わりに船舶や航空機に対して迅速に警報が発されます。

また、日本のEEZ内にミサイルが落下するという伝達情報があった場合、屋外にいる方は、近くの建物や地下に避難し、屋内にいる方は、できるだけ窓から離れ、可能であれば窓のない部屋に移動するのがベストです。

まとめ

ここまで、他国からのミサイル発射ニュースでよく見る“EEZ”に関することを中心に解説しましたが、いかがでしたでしょうか?

今後も、北朝鮮や中国からのミサイル発射は頻繁に行われることが予想されます。

また、それらがEEZ内に着弾する可能性は十分に考えられるため、不本意ではありますが、常にある程度の危機感を持っておく必要があると言えます。

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