“感染症法”とは?

時事ネタ

日本では、感染症を取り巻く状況の変化に対応するため、“感染症法”という法律が施行されています。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、注目される機会も多くなったこちらの法律ですが、具体的にはどのような内容なのでしょうか?
ここからは、概要とあわせて解説したいと思います。

感染症法の概要

感染症法は、感染症の予防や感染症患者に対する医療に関する措置について定めた法律です。
正式名称は、感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律といいます。
従来の伝染病予防法、性病予防法、エイズ予防法の3つを統合し、1998年に制定、公布されたもので、1999年から施行されました。
その後、2007年には、結核予防法を新たに統合し、人権意識の高まりから、人権尊重や最小限度の措置の原則を明記するなど、適宜改正されています。
また、2021年には、新型コロナウイルスの拡大防止に向けた関連法案の修正も行われました。

感染症法における感染症の分類

感染症法では、感染力や罹患した場合の重篤性などに基づき、感染症を危険性が高い順に一類から五類に分類しています。
それぞれに該当する代表的な感染症を見てみましょう。

一類感染症

一類感染症とは、感染力や罹患した場合の重篤性から判断して、極めて危険性が高い感染症を指しています。
代表的な一類感染症には、以下のものが挙げられます。

・エボラ出血熱
・疱瘡
・ペスト

エボラ出血熱は、これまでアフリカで発生した感染症で、野生動物から人に感染します。
主な症状は発熱や頭痛、下痢や嘔吐などであり、ウイルスの種類によっては、致死率が80~90%にもなります。
また、疱瘡は全身に膿疱を生ずる感染症で、ペストは感染者の皮膚が内出血して紫黒色になることから、黒死病とも呼ばれています。

二類感染症

二類感染症とは、感染力や罹患した場合の重篤性から判断し、危険度が高いとされる感染症で、主に以下のようなものが該当します。

・結核
・SARS
・MERS

結核は、結核菌という細菌が体内に入り、増えることによって起こる感染症であり、特有のさまざまな炎症や、呼吸能力の低下などが見られます。
また、SARSはSARSコロナウイルス、MERSはMERSコロナウイルスによって引き起こされるウイルス性の呼吸器疾患です。

三類感染症

三類感染症とは、感染力や罹患した場合の重篤性から判断し、それほど危険度は高くないものの、特定の職業への就業によって集団感染を起こし得る以下のような感染症を指しています。

・コレラ
・赤痢

コレラはコレラ菌を病原体とする経口感染症の1つで、腹痛や発熱はなく、低体温や脱水症状などを引き起こすものです。
また、赤痢は下痢、発熱、血便、腹痛などを伴う大腸感染症です。

四類感染症

四類感染症とは、動物や飲食物等を介して人に感染し、国民の健康に影響を与えるおそれがある感染症として定められているものを指し、以下のようなものが当てはまります。

・A型肝炎
・マラリア

A型肝炎ウイルスが原因のA形肝炎は、多くの一過性の急性肝炎症状で終わり、治癒後には強い免疫を獲得するものです。
また、マラリアは熱帯から亜熱帯に広く分布するマラリア原虫による感染症で、40度近くの激しい高熱に襲われますが、比較的短時間で熱は下がります。

五類感染症

五類感染症とは、国が感染等の発生動向の調査を行い、その結果などについて国民や医療従事者に共有することで、発生や防止すべき感染症です。
具体的には、以下のようなものが該当します。

・季節性インフルエンザ
・麻疹
・後天性免疫不全症候群
・ロタウイルス
・細菌性髄膜炎

その他の感染症について

感染症法において、上記以外の感染症については、それぞれ以下のように分類されています。

・新型インフルエンザ等感染症
・指定感染症
・新感染症

新型インフルエンザ等感染症

新型インフルエンザ等感染症に当てはまるのは、新型インフルエンザや、ここ数年猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症です。
新型インフルエンザは、インフルエンザウイルスのうち、人から人の伝染能力を新たに有するようになったインフルエンザウイルスを病原体とするものです。
また、新型コロナウイルスは、SARSコロナウイルス2が人に感染することで発症する気道感染症で、これまで6億人を超える感染者数を記録しています。

指定感染症

指定感染症とは、既知の感染症であっても、危険度が高く、特別な対応が必要だと判断される場合に、政令によって指定されるものをいいます。

新感染症

新感染症とは、前述したいずれにも該当しないもので、危険度が高いと考えられる新たな感染症が確認された場合に、対応および指定されるものです。
これまで鳥インフルエンザ、SARS、MERSがこちらに指定され、いずれも後々二類感染症として定められました。

まとめ

ここまで、感染症法の概要と、こちらにおいて定められている感染症の分類について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
感染症法は、変化していく感染症に応じて法体制を整え、対策の充実を図るための重要な法律です。
今後も新型コロナウイルスのように、こちらの法律に追記されるような強力な感染症が登場する可能性はゼロではありません。

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