2021年、メジャーリーガーの大谷翔平選手が、2001年のイチロー選手以来となるシーズンMVP(最優秀選手)に満票で選出されました。
また、2022年もその勢いは衰えることなく、メジャー初の“規定打席・規定投球回”という大偉業を達成しています。
今回は、こちらの記録のすごさについて解説します。
規定打席の概要
規定打席とは、プロ野球の公式戦において、打撃ランキングの対象者となるため、1シーズンに必要な打席数のことをいいます。
メジャーリーグでは、所属チームの試合数×3.1という計算式で算出されるものであり、現在メジャーの試合数は162試合であることから、162×3.1で502打席が規定打席ということになります。
1年のシーズンでもっともヒットを打つ確率が高い打者を表す首位打者、もっとも塁に出る確率が高い打者を表す最高出塁率打者といったタイトルは、原則こちらの規定打席に到達した選手から選出されます。
ちなみに、1シーズンの試合数が減少すれば、規定打席数もそれにあわせて少なくなります。
実際、コロナの影響でMLBと選手会の労使協定が長引いた2020年、メジャーリーグの公式戦は60試合しか開催されておらず、この年の規定打席数は60×3.1で186打席でした。
規定投球回の概要
規定投球回とは、投手がタイトルを獲得するために必要な投球回数(イニング)のことをいいます。
具体的には、もっとも防御率が優秀な(0に近い)ピッチャーに贈られる最優秀防御率のタイトルを獲得するために必要な投球回数であり、こちらは所属チームの年間試合数がそのまま当てはまります。
つまり、メジャーリーグは162試合であるため、162回が規定投球回ということになります。
基本的に、規定投球回を達成できるのは、試合開始からマウンドに立つ先発投手であり、その後を受けて登板する中継ぎ投手が規定投球回に到達したり、最優秀防御率のタイトルを獲得したりすることはありません。
規定打席・規定投球回同時達成のすごさ
2022年、大谷翔平選手が達成した規定打席・規定投球回は、1901年、メジャーリーグが現在のア・リーグ、ナ・リーグの二大リーグ制になって以来、誰一人として達成していない記録です。
同じ投打二刀流ということもあり、大谷選手と比較されることも多いベーブ・ルースは、“野球の神様”とも呼ばれる伝説的な選手です。
1918年のメジャーリーグ公式記録において、ベーブ・ルースは166.1回を投げ、防御率2.22でア・リーグ9位にランクインしていますが、打率は.300を記録したものの、ランキングには名を連ねていません。
また、翌1919年は、打率.322でリーグ7位にランキングされていて、防御率も2.97を記録しているものの、防御率ランキングには名前がありません。
つまり、野球の神様として誰もが知る存在であるベーブ・ルースですら、規定打席・規定投球回を同時に達成したことはないのです。
ちなみに、日本のプロ野球(NPB)においては、規定打席・規定投球回の同時達成者が過去に7名存在しますが、こちらは最新でも1950年に野口二郎が達成したケースまでさかのぼる記録であり、近代プロ野球においてどれほど難しい記録であるかがわかります。
ただ単に同時達成しただけではない
大谷選手の規定打席・規定投球回の同時達成は、メジャーリーグにおいて過去に前例がありません。
また、こちらの記録の本当にすごいところは、ただ単に規定打席、規定投球回に到達しただけではないという点にあります。
大谷選手の2022年シーズンの本塁打数は34本であり、こちらは所属するエンゼルスにおいてチームトップの成績、ア・リーグ全体で見ても4位という好成績です。
その他、大谷選手は打点(95打点)、安打数(160本)でもチームトップの成績を残していて、主軸打者としてチームをけん引し続けたことがわかります。
また、投手成績に関しては、さらに圧巻の数字を残しています。
防御率(2.33)、勝利数(15勝)、奪三振数(219)はすべてチームトップの成績であり、防御率と勝利数はア・リーグ全体で4位、奪三振数は3位を記録しています。
ちなみに、投手が1試合(9イニング)を投げた場合に、平均でいくつ三振を奪うことができるかという奪三振率に関しては、ア・リーグ全体で1位の成績を収めています。
これらのデータを見てわかるように、大谷選手は投手として、打者として1年間、試合に出場し続けただけでなく、圧倒的なパフォーマンスを披露し続けたのです。
そして何より、投手と打者というまったく異なるポジションを同時にこなしながら、大きな故障をせずに1年間を乗り切っています。
どれだけ好成績を収める選手であっても、ケガによって長期離脱してしまうと、規定打席、規定投球回のいずれも達成することは難しいため、こちらは非常に価値のある記録だと言えます。
まとめ
ここまで、2022年シーズンに大谷翔平選手が達成した規定打席・規定投球回について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
メジャーリーグではもちろん、日本のプロ野球においても、こちらの記録を達成する選手は、当分出てこないことが予想されます。
ましてや、大谷選手のようにタイトル争いにまで顔を出すような選手が現れる可能性は、極めて低いと言えます。