これまで、消費税は間接税という扱いをされてきましたが、法律上の定義を見る限り、消費者に負担する義務はなく、他の間接税とは異なる性質を持っていることがわかります。
前回の記事では、主にその違いについて解説しましたが、今回は消費税における実際の仕組みについて、もう少し詳しく解説したいと思います。
他の間接税と消費税との違いをおさらい
前回のおさらいのような形になりますが、まずは他の間接税と消費税のどこが決定的に違うのかについて解説します。
例えば、入湯税やゴルフ場利用税といった間接税は、「消費者(利用者)に課する」という文言が法律上に記載されています。
つまり、温泉施設やゴルフ場を利用した方に、支払う義務がある税金だということです。
一方、消費税の納税義務者に関する記載には、「消費者に課する」という文言が一切存在しません。
記載されているのは、「事業者は国内において行った課税資産の譲渡等につき、この法律により消費税を納める義務がある」ということのみです。
こちらが、他の間接税と消費税の大きな違いです。
ちなみに、国税庁のタックスアンサーというホームページにも、同じようなことが記載されています。
こちらのページでは、消費税の納税義務者について、以下のように説明しています。
「消費税の納税義務者は事業者です。
国内取引の場合には、事業者は非課税取引を除き、事業として対価を得て行う資産の譲渡や貸付、役務の提供について、消費税の納税義務を行うことになっています。」
ご覧の通り、「消費者に課する」という記載は、どこにも存在しません。
さらに、その後念を押すように、「このように、国内取引の消費税の納税義務者は事業者ですから、事業者でない者は納税の義務はありません」と書かれています。
消費税が、これまでの認識通り間接税に該当するのであれば、このような説明の仕方は極めて不可解です。
これらの事実からも、消費税が他の間接税とは一線を画すものだということがわかります。
実際の消費税の仕組みについて
では、実際のところ消費税の仕組みは、一体どのようになっているのでしょうか?
事実として、私たち消費者は、スーパーで食材を購入したときなどに、その商品ごとの消費税を支払っています。
例えば、100円の商品の場合、値札には100円という本体の価格(税抜価格)と、110円という消費税を上乗せした税込価格が記載されています。
こちらは、実はこのように記載されているだけで、消費者から消費税を徴収しているわけではないのです。
前述の通り、事業者には消費税を税務署に納めなければいけない義務があります。
そのため、商品を値上げしなければ、自分で利益を削り、その分を消費税の納税に充てなければいけなくなります。
つまり、売値を上げなければ、消費税を納税することによって赤字になるため、税込価格という形で売値を上げているというわけです。
レシートにおける消費税額の記載について
スーパーなどで商品を購入したり、店舗で何かしらのサービスを受けたりした際には、レシートが発行されます。
こちらのレシートには、「この中には消費税が10%含まれています」「税額は〇〇円です」といった記載がありますが、前述した仕組みを考えると、こちらの記載は正しくないということになります。
消費者に「消費税として10%(〇〇円)支払ってもらっています」と伝えることにより、“消費税=預り金”というイメージを持ってもらうために、このような記載をしているに過ぎません。
税金が預り金のような性質になるのは、あくまで他の間接税ように、消費者に支払い義務があり、それを納税義務のある事業者が一旦受け取る場合のみです。
消費税は、消費者に支払い義務がないため、こちらを事業者に支払うことは、預り金ではなく単なる支払い金です。
商品の購入、サービスの利用の対価として支払う金銭と、何ら違いはありません。
問題は事業者が“消費税”として徴収していること
ここまで読んでくださった方は、消費税は間接税ではないということについて、ある程度理解していただけたかと思います。
しかし、本当の問題は消費税が間接税なのか、直接税なのかという点ではありません。
事業者が消費者を騙し、単なる商品への上乗せ金額を消費税として徴収しているところに問題があります。
例えば、事業者が商品、サービスの値上げを公表し、あくまで上乗せ分を消費者から受け取っているということを正直に伝えれば、何の問題もありません。
納税義務者は事業者ですから、その金額を値上げによって確保するのは自然なことです。
ところが、現実は商品への上乗せ分を税込価格として消費者に伝えているため、こちらがさまざまな場所で議論や波紋を呼ぶことにつながっています。
まとめ
ここまで、消費税は間接税ではない理由や、実際の支払いの仕組み、問題点などについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
消費税の納税義務がある事業者にとって、消費者から税込価格を受け取ることは、納税のためではなく、赤字になるのを防ぐためです。
消費税を支払うことに関しては、今や消費者にとって当たり前になっていますが、上記のような実情を考えると、お世辞にも健全な税金とは言えません。