自民党の高市早苗経済安全保障担当大臣は、“セキュリティ・クリアランス”の早期導入を推進しています。
こちらは、高市大臣における大臣就任以来の悲願であり、現在も制度整備に向けた活動を積極的に行っています。
今回は、セキュリティ・クリアランスの概要やメリット・デメリットなどについて解説します。
セキュリティ・クリアランスの概要
セキュリティ・クリアランスは、公的機関や関連する民間企業が職員を採用する際に利用する制度です。
具体的には、国家機密等の秘密にすべき情報を扱う職員に対し、その適格性を審査する制度であり、特別管理秘密を扱う行政機関の職員を対象とする秘密取扱者適格性確認制度などがこちらに該当します。
機密情報に触れる前に審査を実施することで、アクセス可能な人物を厳選し、情報漏えいや悪用されないようにすることが目的です。
アメリカなどの海外諸国ではすでに法制化されていて、他にもドイツや韓国といった多くの先進国で導入が始まっています。
特定秘密保護法との違い
セキュリティ・クリアランスとよく似たものに、特定秘密保護法というものがあります。
こちらは、2013年に成立した制度で、特定秘密に指定された情報を扱う職員を調査し、国もしくは国民の安全に関わる情報の漏えい、流出を防止するための制度です。
また、セキュリティ・クリアランスとの違いとしては、審査の対象となる職員の範囲が挙げられます。
セキュリティ・クリアランスの方が、民間企業などを含めたより広い範囲を審査の対象としています。
セキュリティ・クリアランスのメリット
セキュリティ・クリアランスを導入することのメリットは、なんといっても機密情報の持ち出しリスクを軽減できるという点です。
日本は最先端の技術や情報、人材が集まり、高度な研究開発や企業活動をしているにもかかわらず、スパイ活動に対して重型が課せられにくい環境です。
セキュリティ・クリアランスが導入されれば、機密情報にアクセスできる人物がスパイであるリスク、あるいはスパイにつけ込まれるリスクを避け、防御策として機能することが期待できます。
また、前述の通り、海外ではすでにセキュリティ・クリアランスを導入している国が存在しますが、日本も法制化することにより、情報共有をする上でのリスクを軽減させ、海外と共同開発を進められるようになります。
その他、セキュリティ・クリアランスの導入は、企業におけるビジネスチャンスの拡大にもつながります。
こちらは、民間企業がセキュリティ・クリアランス資格を付与されることにより、諸外国の政府や企業とのつながりが活性化されるからです。
セキュリティ・クリアランスのデメリット
セキュリティ・クリアランス導入のデメリットとしては、まず適格性調査による個人情報の流出が挙げられます。
機密情報扱いの適格性は、その人物の犯罪歴や薬物使用歴、飲酒の節度や信用といった財務状況、交友関係など、多岐に渡る要素をチェックした上で判断されます。
日本国民は、このような個人情報の流出を嫌う傾向にあるため、反対派の方も少なくありません。
また、こちらはセキュリティ・クリアランスに限ったことではありませんが、新たな制度が創設されることにより、政府による干渉が増加し、特に民間企業において、これまで通り業務がスムーズに進まないことも考えられます。
もちろん、制度化してしまうと、このような政府の介入を止めることはできません。
ちなみに、このような民間企業に対する政府の介入が増加し、政府の人間を置いた方が良いという風潮になると、天下り先として利用される可能性も高くなりますし、政府や官僚からの多額の支援金などが横行する可能性もゼロではありません。
今後のセキュリティ・クリアランスに関する動き
高市大臣は、今年2月に開催された経済安全保障会議において進行役を務めました。
そして、セキュリティ・クリアランスを含む日本の情報保全の強化に向けた検討を進める必要があること、経済界からも、主要国の情報保全制度と整合性のある制度の整備を求める声があることなどについて説明しています。
また、岸田総理は、「セキュリティ・クリアランスを含む日本の情報保全の強化は、同盟国や同志国等との円滑な協力のために重要であり、このような制度を整備することは、産業界の国際的なビジネスの機会の確保にもつながる」と話しています。
高市大臣は今後1年程度を目安に、セキュリティ・クリアランス制度のニーズや論点等を専門的な見地から検討するための有識者会議を立ち上げ、可能な限り速やかに検討作業を進めることとなっています。
まとめ
ここまで、高市大臣が進めようとしているセキュリティ・クリアランスについて詳しく解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
情報社会において、情報を持つことはとても大きな強みです。
しかし、情報を収集するためには監視や調査が付き物であり、国民はそれを良く思わない可能性が高いです。
そのため、今後どういった形で調整されていくのかについては、高市大臣の手腕にかかっていると言っても過言ではありません。