“感染症対応融資(全国制度)”について解説します

時事ネタ

新型コロナウイルスの影響を多大に受けている企業の中には、融資を受けてでも資金繰りを安定させたいと考えるところも多いでしょう。
また、そんな企業にとって非常にありがたい制度が、今回解説する“感染症対応融資(全国制度)”です。
一体どのような制度なのか見ていきましょう。

感染症対応融資(全国制度)の概要

当制度は、新型コロナウイルスの感染拡大により、事業活動に一定の不利益が生じている中小企業や組合に対し、都が良心的な融資を行うという制度です。
”感染症全国“とも呼ばれています。
具体的には、3年間実質無利子・無担保・信用保証料なしの融資が行われます。
ちなみに、融資される金額の上限は3,000万円で、融資を受けた中小企業等は、これを運転資金または設備資金に充てることができます。
融資を受けようと考える企業の中には、利子や担保がネックとなっているところもあるかもしれませんが、当制度では基本的にその点を考慮する必要がありません。
したがって、もし審査に通過すれば、企業はとても効率的な資金集め、経営状況の立て直しへと繋げられるでしょう。

利用条件について

当制度の利用者は、必ず以下の条件をクリアしている必要があります。
1つずつ確認していきましょう。

①中小企業あるいは組合であること
②東京都内に事業所等があり、信用保証協会の保証対象業種に属する事業を営んでいること
③上記の事業を営むための許可や認可を受けていること(これから受けること)
④各種租税の申告漏れや滞納あるいは社会保険料の滞納がないこと
⑤現在かつ将来に渡って、以下に該当しないこと
 暴力団員等ではないこと
 暴力団員等が経営を支配する中小企業等ではないこと
 暴力的な要求等をしないこと
⑥セーフティネット保証4号、5号および危機関連保証のうち、区市町村長の認定を得ていること
5号の場合、売上が15%以上減っている中小企業等に限ります。

セーフティネット保証4号、5号とは?

経営の安定化が厳しい中小企業を支援するため、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で、借入債務を保証する制度を“セーフティネット保証”といいます。
“経営安定関連保証”とも呼ばれますね。
また、当制度には1~8号の“認定区分”というものが設けられていますが、コロナへの対策としては4号と5号の認定が対象となっています。
ちなみに、4号は“突発的災害を受けた地域”、5号は“業況の悪化している業種”という認定区分であり、これはまさにコロナによって被害を受けた地域、業種を指しています。
当制度については、別記事で詳しく解説しますので、もっと詳しく知りたいという方は、そちらの記事も参考にしてみてください。

融資の詳細等について

感染症対応融資(全国制度)は、2020年5月1日から申込受付をスタートさせた、比較的新しい融資制度です。
また、冒頭でも触れたように、融資される金額の上限は3,000万円となっていて、資金使途は運転資金、設備資金です。
融資金額については、2020年4月7日に国から発表のあった、“都道府県による制度融資を活用した民間金融機関による実質無利子融資”の全国の信用保証協会での融資残高を含めます。
そして、返済期間は据置期間5年を含む10年で、細かい融資利率は以下のようになっています。

 固定金利3年以内:1.700%
 固定金利3年以上5年以内:1.800%(責任共有制度の対象外:1.600%)
 固定金利5年以上7年以内:2.000%(責任共有制度の対象外:1.800%)
 固定金利7年以上10年以内:2.200%(責任共有制度の対象外:2.000%)
(原則としてうち1.7%は利子補給)

ちなみに、信用保証料は全事業者0.85%となりますが、これも冒頭で少し触れたように、原則として国が信用保証料の全額を補助しますので、安心してください。
その他の融資の詳細は以下の通りです。

 融資の形式:証書貸付または手形貸付
 保証人:原則として法人代表者を除き、連帯保証人は不要
 物的担保:原則無担保(すでに設定された根抵当権等を除く)

申請場所、必要書類について

当制度の申請場所は、東京都中小企業制度融資取扱指定金融機関です。
これには、普通銀行、信用金庫、信用組合の他、政府系金融機関や漁協・農業系統金融機関も含まれています。
また、必要書類は以下の通りです。

①認定書(セーフティネット保証4号、5号、危機関連保証)
②金融機関チェックシート
③情報提供等に関する同意書(様式44)

融資制度選択例

東京都では、感染症対応融資(全国制度)の他にも、“新型コロナウイルス感染症対応緊急融資”、“新型コロナウイルス感染症対応緊急借換”、“危機対応融資”という、コロナ関連の融資メニューが創設されています。
では、ここからは初めて上記制度を利用する場合の制度選択例について解説しましょう。

①セーフティネット保証4号、5号、危機関連保証に関する認定書を取得した方
3,000万円以下での保証申込は、原則として感染症対応融資(全国制度)での申込となります。
ただ、セーフティネット5号認定を取得した、売上の減少率が15%未満の法人または小規模でない個人事業の方は、感染症対応融資(全国制度)での保証料補助は1/2となり、利子補給は受けられません。
この場合、新型コロナウイルス感染症対応緊急融資を利用することで、保証料補助(全額)や利子補給(3年全額/1億円まで)を受けられます。
ちなみに、3,000万円以上1億円以下の保証申込は、2口に分けての申込となります。

例:8,000万円の申込時
3,000万円(感染症対応融資(全国制度))と5,000万円(新型コロナウイルス感染症対応緊急融資、新型コロナウイルス感染症対応緊急借換、危機対応融資のいずれか)

また、1億円以上の保証申込は、3口に分けての申込を行います。

例:1億5,000万円の申込時
3,000万円(感染症対応融資(全国制度))と7,000万円(新型コロナウイルス感染症対応緊急融資、新型コロナウイルス感染症対応緊急借換、危機対応融資のいずれか)と5,000万円(新型コロナウイルス感染症対応緊急融資、新型コロナウイルス感染症対応緊急借換、危機対応融資のいずれか/利子補給なし)

②セーフティネット保証4号、5号、危機関連保証に関する認定書を持っていない方
1億円以下の保証申込は、新型コロナウイルス感染症対応緊急融資または新型コロナウイルス感染症対応緊急借換での申込となります。
感染症対応融資(全国制度)での申込はできません。
また、1億円以上の保証申込は、2口で申し込む形になります。

例:1億5,000万円の申込時
1億円(新型コロナウイルス感染症対応緊急融資または新型コロナウイルス感染症対応緊急借換)と5,000万円(新型コロナウイルス感染症対応緊急融資または新型コロナウイルス感染症対応緊急借換/利子補給なし)

制度融資相談窓口について

感染症対応融資(全国制度)を始めとする、東京都の制度融資制度について相談したいという方は、以下のいずれかの窓口を利用してください。

 東京信用保証協会
 東京都(産業労働金融部金融課等)
 公益財団法人東京都中小企業振興公社
 東京都中小企業団体中央会
 商工会議所
 商工会
 東京都商工会連合会

まとめ

ここまで、新たな東京都の融資制度である“感染症対応融資(全国制度)”のことを中心に解説してきましたが、いかがでしたか?
コロナの影響を受けた企業は、苦境を乗り越えるためにさまざまな工夫を凝らし、経営状況を安定させなければいけません。
もちろん、中には融資を受けることを躊躇する企業もあるかもしれませんが、感染症対応融資(全国制度)はとても良心的なため、条件を満たしているのであればぜひ利用しましょう。

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