騒がれている「サラリーマン増税」とは?

時事ネタ

2023年6月、サラリーマンにとって重大な話題が出て騒ぎとなりました。
政府税制調査会が岸田総理に対して、給与所得控除の見直しに伝手言及を含んだ答申を提出したことで、サラリーマンを対象とした増税ではないかという憶測が出されたのです。
サラリーマンを対象とした増税というのは、どのようなものか解説します。

サラリーマン増税とは?

政府税制調査会では、6月30日に岸田総理の元へ、中長期的な税制に関しての答申を提出しています。
財政状況が悪化していることを踏まえて、歳出に応じた税収を確保するという目的で給与や退職金の税制を是正するという内容です。

世間では是正を増税とイコールであると受け止め、大きな騒ぎとなったのです。
しかし、本当に増税となるのでしょうか?
現行の税制と、是正案を比較してみましょう。

現行の税制における給与所得控除の額は、収入金額で異なります。
年間の収入額が300万円なら、給与所得控除額は収入金額の30%に8万円を加算した額となるので、約32.6%の98万円が控除されます。

年収が500万円の場合の給与所得控除額は、収入金額の20%に44万円を加算した額となるため、28.8%の144万円が控除されます。
年収が900万円なら、控除額の上限である約22%の195万円が控除されます。

給与所得控除以外にも、48万円の基礎控除と社会保険料控除があります。
他の控除を加えずに計算した場合、社会保険料控除が年収の15%であれば年収500万円の場合の課税所得が233万円となり、所得税は税率10%、控除額が9万7,500円なので、13万5,500円課されることとなり、住民税は23万3,000円、合計で36万8,500円となります。

しかし、給与所得控除の是正が認められた場合、改正後の控除は3%にまで下がる可能性があるのです。
年収500万円の場合、控除が3%まで下がってしまうと納税額は約2倍になってしまいます。

また、退職金控除に関しても、是正の対象になっています。
退職所得控除は、今までであれば勤続年数が20年以下か、20年以上かで異なります。
20年以下の場合は勤続年数1年ごとに40万円、20年を超えると800万円に20年を超える勤続年数1年ごとに70万円を加えた額となります。

ちなみに、1年未満の端数がある場合は切り上げとなるので、例えば勤続年数が2年と1日だった場合は3年として計算します。
また、計算上の控除額が80万円に満たない場合の控除額は80万円となります。

勤続年数が長ければ長いほど、退職金控除も多くなります。
例えば、勤続年数15年で退職した場合の退職金控除は、40万円×15年=600万円です。
しかし、21年で退職した場合は800万円+70万円=870万円となるのです。

今回見直しをするかどうかの議論をしている内容として、勤続年数20年を超える場合でも1年あたりの控除額を40万円にするべきではないか、という点があります。
1年あたり40万円になった場合の控除額は、勤続年数×40万円です。

20年を超えたばかりではあまり差がないのですが、例えば35年間働いて退職した場合、従来の退職金控除の額は1850万円となります。
しかし、一律で1年あたり40万円になってしまうと1400万円しか控除されず、400万円以上少なくなってしまいます。

勤続年数が長くなれば、退職金は増えていくでしょう。
また、役職などがつけば1年あたりの退職金への加算額も増えることが多いため、直線ではなく曲線を描いて増えていくのです。

しかし、控除額が一律40万円になってしまうと、勤続年数が長いほど税負担は増えてしまうのです。
20年以上同じ企業で勤務している人にとっては、大きな影響があるでしょう。

なぜ、是正が必要なのか

そもそも、現状の控除制度であれば不満も出ないのに、なぜ是正が必要とされているのでしょうか?
是正が必要とされるのは、政府の歳出と歳入のバランスが崩れていることが原因です。

一般会計予算の歳入と歳出は、毎年同じ金額になっています。
しかし、令和5年度の予算の内訳をみると、歳出の国債費は22.1%なのに対し、公債金は31.1%となっているため、公債による実質的な借金が毎年増え続けているのです。

借金も含めて収入と支出を同じようにするのは、健全な状態とは言えません。
歳入を増やすにはどうしたらいいのかということで考えたのが、サラリーマンの控除を減額するということなのです。

しかし、サラリーマンの控除はそもそも多すぎる、とも言われています。
給与所得控除を割合にすると30%前後となっているのですが、控除というのは自営業者の経費にあたるものと考えた概算となっています。

しかし、会社に勤めている以上、仕事にかかる費用は会社が負担します。
仕事に必要なスーツなどは自己負担ですが、仕事に必要な経費が給与所得の3割を占めることはあるのでしょうか?

また、退職金控除についても中小企業では退職金制度がないところが2割以上もあり、勤続年数が38年であっても退職金の額は平均で1,000万円弱です。
ほとんどの人は、控除額が見直されてもあまり関係ないかもしれません。

まとめ

6月から、サラリーマン増税という話題がサラリーマンとして働く人や家族の中で大きな騒ぎとなっています。
サラリーマンには給与所得控除と退職金控除があるのですが、見直しによって控除額が大幅に減額される可能性がある、というものです。
決まった場合は実質的な増税となるのですが、まだ詳しい内容は決まっていません。
控除額がどのくらい減るのか、またいつから始まるのか、注目しておきましょう。

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