リニア中央新幹線は、21世紀の夢の超特急とも言われている乗り物で、2027年の開業を目指しています。
しかし、現在こちらの工事は思うように進んでおらず、こちらが“リニア問題”として波紋を呼んでいます。
ここからは、リニア問題の概要や現状などについて解説したいと思います。
リニア中央新幹線の概要
そもそも、リニア中央新幹線とは、全国新幹線鉄道整備法の基本計画路線に位置付けられている中央新幹線を、時速500kmで走行する超電導リニアモーターカーにより、東京都を起点に、甲府市付近、名古屋市付近、奈良市付近を主な経過地として、終点大阪市までを結ぶ新幹線のことをいいます。
こちらの計画が実現すれば、東京~大阪間はわずか1時間程度で移動できるようになり、日本における交通の利便性は格段に向上します。
また、リニア中央新幹線が導入されることにより、広い地域を高速交通網に組み入れることができ、多様な拠点都市が誕生することにもつながります。
リニア問題の概要
前述の通り、リニア中央新幹線の開業は、日本の交通の利便性や経済活性化などさまざまなメリットをもたらすものです。
また、こちらは総工費7兆円余りにも上る巨大プロジェクトであり、静岡県内においては、南アルプスの地下でトンネルを掘る工事が計画されています。
沿線においてもっとも難しい工事の1つとされるトンネルは、山の表面から最大で1,400mもの深さまで掘り進められますが、静岡県はこちらの工事に対し懸念を示していることから、着工を認めていません。
これにより、開業のための工事が手つかずになっている状態をリニア問題と呼んでいます。
なぜ工事が認められないのか?
リニア問題において、静岡県が着工を認めない理由としては、以下の3つのことが挙げられます。
・水の問題
・生物多様性への影響
・大量発生する残土
水の問題
リニア中央新幹線のトンネルは、南アルプスの地下深くで、大井川の源流の下を貫くように計画されています。
しかし、地中には、大井川の水源となる大量の地下水が貯めこまれているとみられ、対策を取らなかった場合、工事によってトンネル内に地下水が湧き出し、大井川の水は最大で毎秒約2トン減るとされています。
これについてJR東海は、水を通すための導水路をつくり、トンネル内に湧き出た地下水を集め、大井川に戻す対策を計画していますが、こちらの技術的な問題や現実性などを巡り、JR東海と静岡県は対立する形となっています。
生物多様性への影響
JR東海は、南アルプスにトンネルを掘ることにより、付近の地下水が300m以上低下するという解析結果を示しています。
これに対し静岡県は、絶滅の恐れがある高山植物のタカネマンテマ、淡水魚のヤマトイワナ、ライチョウなどが南アルプスに生息していることから、生物多様性への影響を恐れました。
こちらも、着工を認めない理由の1つです。
ちなみに、JR東海は、影響の回避や低減の方法を検討していて、回避できない場合には、植物や動物を別の場所に移して保護するとしています。
大量発生する残土
リニア中央新幹線のトンネル工事を行うことにより、370万立方メートルもの残土が発生します。
このうち、燕沢付近では、18ヘクタールの面積に65mの高さで盛土をする計画ですが、こちらにおける生態系への影響や安全性、自然由来の重金属などを含む発生土の水質への影響について、静岡県は懸念を示していて、工事は難航しています。
リニア問題の現状
リニア中央新幹線のトンネル工事は、JR東海と静岡県の対立によって滞っていましたが、最近はようやく良い方向に進み始めています。
静岡市の難波喬司市長は今月25日、JR東海が示した田代ダムを活用する大井川の流通確保案について、「有力な案として実現を目指すべきだ」と指示する考えを示しました。
こちらの案は、工事で水が県外に流出する分、東京電力リニューアブルパワーが田代ダムで発電用に取水する量を減らすというもので、大井川流域市町が実現に期待を寄せています。
静岡県は、慎重な姿勢を示しつつ、今月に入ってJR東海と東電側が協議を始めることを了承しました。
また、難波市長は、「県の理事をしていたときも、同案は良いと言った」と説明し、リニア担当だった副知事時代から、「十分あり得る」と発言するなど、同案に対して前向きな姿勢を示しています。
流域10市町との関係については、「連携を強化し、一体的に動いていきたい」と語り、一方で流域市町や利水団体でつくる“大井川利水関係協議会”への加入にはこだわっていないとしています。
流域10市町の首長は今月、リニア中央新幹線の議論を進めるため、国の積極的な関与を求める連名の要望書を国土交通省に提出しました。
まとめ
ここまで、リニア問題の概要や現在の状況などについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
リニア中央新幹線は、均衡ある国土づくりや多重型ネットワークの構築を見込める、環境保全とスピードを併せ持った新時代の交通機関です。
一刻も早くリニア問題が解決し、こちらが日本の生活環境を大きく変える未来を、多くの方が願っています。