戦国の世で活躍した武将以外の人物に、鳥居強右衛門がいます。
鳥居強右衛門は足軽でしたが、長篠の戦いで命を懸けた活躍を見せます。
一足軽が大活躍した背景には、何があったのでしょうか?
今回は、長篠の戦いで活躍した足軽、鳥居強右衛門の生涯とエピソードをご紹介します。
鳥居強右衛門の生涯
鳥居強右衛門の生涯は不明で、長篠の戦いで登場したことしか分かっていません。
長篠の戦いの当時、鳥居強右衛門は36歳くらいだったそうです。
名前は、「勝商」でした。
足軽としてしかなかったのに、注目を集めたのはきちんとした理由があります。
それでは、歴史上に登場する鳥居強右衛門の活躍を見てみましょう。
長篠の戦いの際、奥平家当主の長男奥平信昌は、徳川家康から長篠城を託され守っていましたが、武田勝頼の圧倒的な兵に包囲されてしまい、攻撃を受けてしまいます。
この時、奥平信昌と武田勝頼の兵には、大きな兵力差がありました。
それでも何とか防衛を続けていたのですが、火矢により兵糧庫が焼失してしまい、落城の危機に陥ってしまいます。
そこで奥平信昌は、長篠城の危機を救うため援軍を要請しようと決意しました。
しかし、武田軍に囲まれている中、使者が安全に動ける状況ではありません。
命を落としてしまう確率の方が高い状況下で、誰を使者にするのか、困った状況になってしまいます。
リスクの高い役割なのは、私たちにも理解できるでしょう。
この時、岡崎城への使者を志願したのが、鳥居強右衛門です。
誰が見ても無謀な状況の中、夜間を駆け抜け岡崎城に到達し、援軍の派遣を無事に要請したのです。
当然、命の保障がありませんから、鳥居強右衛門も道中怖かったことでしょう。
ですが、仲間のために行動したのです。
その結果、無事に岡崎城に辿り着くことができました。
これだけでも大きな役目を果たしたのですから、勇敢だったと言うことができます。
そして、彼の凄いところはこれだけではありません。
なんと、朗報を一刻も早く長篠城に伝えなければとすぐさま出発したのです。
織田信長と徳川家康は、少し休んでから戻ったらどうかと進言したそうですが、早めに伝えた方がいいと判断したのでしょう。
この積極さに、両者も大変驚いたはずです。
ところが長篠城に入城しようとした際、近くの村の有海村で警戒を強めていた武田軍に見つかってしまい、捕らわれてしまいます。
武田軍に捕まった後取り調べを受けた鳥居強右衛門は、武田勝頼から自分に従えば命を助け、武田家の家臣にすると言われました。
その代わり、長篠城に虚偽の情報を流せと命令されたのです。
自分の命を守るならば、命令に従うしかありません。
さて、どうしたのでしょうか?
予想もしない、勇気ある行動に出たのです。
なんと表向きは従ったように見せ、長篠城に見通しのきく場所へ連れられた後、城へ向かって援軍が来ることを叫んだのです。
それに怒った武田勝頼は、その場で部下に命じて鳥居強右衛門を殺してしまいます。
鳥居強右衛門は犠牲になってしまいましたが、長篠城では彼の死を無駄にしてはならないと奮起し、援軍が来るまでの間、見事に持ちこたえてみせたのです。
この活躍ぶりは、まさに「命懸けのメッセンジャー」と言うべきです。
鳥居強右衛門のエピソード
彼のエピソードで分かることは、「自分の命よりも大切なもののために行動した」ということです。
他の武将においても、主君のために命を懸けて戦った人物は大勢いますが、その行動原理を思い出してみてください。
「あの人のために行動する」という思いで、それぞれ行動してきたことが分かります。
鳥居強右衛門の立場は足軽ですが、彼が命懸けで使者をしたことで、奥平信昌を勝利に導いたのです。
それは、打算的な行動からではありません。
打算的な行動をするならば、虚偽の情報を流し、命の保障を得るため武田軍に寝返っていたはずです。
命を落とした事実に変わりありませんが、悔いはなかったことでしょう。
そして、鳥居強右衛門のエピソードは、歴史好きの間だけに知られているものではありません。
現在は取り扱っていませんが、明治から太平洋戦争までの国定教科書には、鳥居強右衛門のエピソードが掲載されていたそうです。
当時の時代背景から考えると、教育にピッタリな教材であることが分かります。
教科書にも掲載されるくらいのエピソードですから、当時それを学んで大人になった人なら知らないことがなかったでしょう。
鳥居強右衛門のエピソードを通して、人のために行動することの意味を考え直すことができます。
人との関わり方が変化している現代社会で、似たような行動をする機会は少なくなっています。
それは、少し寂しくありませんか?
忠義とは何かを考えるきっかけは、武将のように身分の高い人、有名な人だけでなく、私たちと似たような、身近な存在からも知ることができるのです。
まとめ
今回は、鳥居強右衛門の生涯とエピソードをご紹介しました。
彼はとても困難な状況の中、命懸けで情報を伝え、援軍を呼ぶ役目を果たした足軽です。
最期は敵に捕まり、偽りの情報を流すことなく、主君や仲間のことを思って亡くなってしまいました。
決して身分の高い人物ではありませんが、命を懸けた行動に心を動かされる人も少なくありません。